パナマでの時間の流れがまだ遅いと感じた時は、「まだここに来てから6ヶ月しか経ってない」と飽きるぐらい言っていた。毎日のように挨拶できる友達が、いつまでも横にいると勘違いしていた。いつのまにかあと1週間しかないと気づいた時、「もっと時間を大事にすれば良かった」「もっと思い出せるように人との写真を撮れば良かった」と思った。かけがえのない時間だった。あんなに楽しくないと母に伝えた学校は、日本とは比べようもならないほど、どうしようもないほど最高の日々だったのかもしれない。あんなにしつこいと思っていた人間は自分にはかけがえのない、代わりなどいない人間だったと理解した。もっとガツガツ行けば良かった。日本人特有の空気を読むという行為は、この場合邪魔になる。積極性が足りないと思った時があった。そして、出会いもあれば別れもあると実感するのが本当に怖い。今こんなに人に逢えて良かったと思えても1月19日に全員とおさらばだ。本当に辛い。

学校で伝統衣装に触れるイベントに参加

私のホストファミリーは、ホストファザーが弁護士、ホストマザーが教師、ホストシスター(姉)が医者という家庭だった。もう1人、ホストシスター(妹)がいた。父は家族で唯一の男性ということもあり、いつも悩みや日頃の不満について相談することができ、生活の中の問題が解消された。母は毎日私を支えてくれた。妹は一番年が近いため学校のことで助けてもらうことがとても多かったが、年が近いゆえに喧嘩することもあった。姉は首都で医者として働き、いつも優しく自慢の姉だった。
人生を一度リセットするように始まった留学だが、日本でまた人生をリスタートすることを考えると、次はどうしようかと留学前と違ったアイデアが広がる。この経験を多くの人に発信したいと思う。
最初の頃はシャイだったので何を発するにも怖くて手が出せなかったが、環境を理解し、順応するに連れて自分がレベルアップするのを感じた。モブキャラから主人公へと。

AFSのイベントでビーチに行ったときの写真 (写っている人:イタリア人 ドイツ人 カナダ人)

パナマで身につけたものは、きっと日本でも多くの場面で、人の為に使えることがあるだろう。加えて私が主人公だと感じたのは人の影響だと思う。日本人と違い、良い意味で人の気も知らず、ズカズカ入ってくる。最初は不快でも、それは思いやりによる行為だと理解し、知り合った人全員が、私のことを心から思ってくれたのだと気付けた。彼らには心の底から感謝している。
また、この留学は自分の中の「普通」が少し変わった留学だったと思う。大きな変革があったわけではないが、例えば日本である事につまずいても、パナマにいた経験を活かして「こんな事どうって事ない」と一歩踏み出せると思う。留学ですごい量の失敗を積み重ねたので、以前より失敗するのも怖くなくなった。
この留学は必ず私の人生にとって人にはない強い武器になるし、これからも初心を忘れず志に向かって日々前進していきたいと思う。

このチャンスをくださった三菱商事とAFSの方々、本当にありがとうございました。

三菱商事高校生海外留学奨学金
2023年・70期 パナマ共和国派遣 / Y.Sさん

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