2022年9月、高校2年生だった私は10ヶ月の留学をするため、フランスに渡った。初めての海外旅行でフランスに訪れてから、いつかこの場所にまた来て実際に生活してみたい、旅行だけでは知り得ないこの国の人や文化についてもっと深く知りたい、と強く思うようになった。それほど、初めて肌で感じた「異文化」は大きなインパクトがあった。

ホストファミリーと初めてのスキーに行きました

全く知らない場所に飛び込むことは、時には恐怖で、そこに誰がいるのかもわからないし、何が起きるのかも想像できない。だから怖い。でもだからこそ、私は知りたかったのだろう。自分が何を知らずに生きているのか、ということを。
基本的に私たちは毎日、見たいものだけを見て、生きている。人とは、社会とは、こういうものだという枠の中で世の中と交わっている。しかし、そういった枠を超えて、会ったことのない人と出会いたい、やったことのないことをやってみたい、知らないことを知りたいという気持ちさえあれば、自分の意志次第でいくらでも手を広げていくことができるのが、留学の大きなメリットだと思う。
一歩を踏み出すことで、(きっと自分が渦中にいるときは、それがどれほどの意味をもつか計り知れないが)あの時の一歩があったから出会えた人がいて、経験できたことがあって、学べたことがある。あの時踏み出した一歩一歩の積み重ねが私をここまで導いてくれたんだと、今ならわかる。

家が近かったAFSの留学生たちとピクニックをしました

この一年は私にとって、毎日が挑戦の連続だった。日常的に使ったことのなかった言語を毎日話し、フランス人に囲まれて生活し、小さなことにも一喜一憂しながらも、変わり続ける自分と対話しながら過ごす毎日は、とても刺激的で毎日が発見と興奮があった。初めて見る景色や伝統的な街並み、味わったことのない料理など、見るもの経験することすべてが自分に新しく、特にフランスに着いて最初の数カ月は、目の前の景色が常にキラキラしていて夢の中にいるような感覚で日々を過ごしていた。

クラスメイトの写真です

ホストファミリーは私の拙いフランス語でもコミュニケーションを諦めずに私と向き合ってくれて、最後まで本当にお世話になった。
南仏やパリに旅行に連れて行ってもらったり、一緒に海辺を馬に乗って走ったり、両親が帰宅する前にブラザーと日本食を作ってサプライズしたりしたことも今となっては懐かしい。12月に家の都合でホストチェンジをしたが、私にとって一番最初のファミリーも最後のファミリーも私のかけがえのない「第二の家族」である。
私が帰国する前日に一番最初のファミリーが私に会いに私の街まで来てくれて、本当にあなたは変わった、人として大きく成長したね、と涙を流しながら言ってくれた。帰国当日も電車に乗る直前までファミリーと泣きながらハグをした。
今でも彼らとは連絡を取っていて先日は誕生日プレゼントをフランスから日本まで送ってくれた。
また、友達と過ごした時間もとても大切な思い出である。ハロウィーンでは友達と仮装をして近所の家をまわったり、新年を一緒に祝ったり、暖かくなってきてからは毎週のように湖まで泳ぎに行ったりしていた。辛いことがあっても絶対に私の味方でいてくれて応援してくれた親友たちの存在は私にとってとても大きなものだった。

楽しいことばかりではなかったし、挑戦した数だけ失敗や挫折も味わった。壁にぶつかるたびに、目の前のことに葛藤しながら自分自身と向き合う日々の中で、改めて見えてくる自分の短所や欠点の多さに嫌気がさしたこともある。しかし、決して自分ひとりではなかったからこそ、フランスで出会った彼らの支えがあったからこそ、乗り越えられた経験がたくさんあったと思う。

陸上クラブでマスコットをやらせてもらっていました(写真は100メートル走)

「人との出会い」、これは私が留学で得た最も大きいものだ。

今、フランスと聞くと、私は一番にフランスで出会った彼らの顔が思い浮かぶ。これは幸せなことだ。もちろんこれは他の国に対しても言えることで、世界中の国々を想像するたびに、この10カ月で出会った様々な国の友達、留学生の仲間たちの顔がすぐに思い浮かぶ。そして私も、自分が留学先で出会った人たちにとって、日本を想像したときに一番に「日本はあの子がいた国」と思い出してもらえる存在になっていたら、それだけでも自分が留学した大きな意味になると思う。

今の世の中は、必ずしも平和といえる世の中ではないと思うけれど、自分が留学したことがきっかけで出会った人たちの日本への価値観や先入観などを少しでもプラスの方向に変えられていたら、日本によいイメージを持ってもらえていたら、そんな「平和の架け橋」になれていたらとてもうれしく思う。

友達の誕生日パーティーの様子です

最後に、私のこの1年の留学は、本当に多くの人に支えられていた。ホストファミリーや友人たち、AFS協会、そして三菱商事の方々に改めて感謝したい。
留学中辛いことがあった時にどれだけ自分の留学が周囲の人に支えられているかを実感し、もっと頑張ろうと勇気をもらい、この10ヶ月を終えることができた。留学を終えた今は、自分が見てきたもの、学んだこと、感じたものの豊富さにまだ圧倒されているが、これから少しずつ自分の人生に昇華させていきたい。

三菱商事高校生海外留学奨学金奨学生
2022年・69期 フランス派遣 / O.Mさん

三菱商事高校生海外留学奨学金

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