私が空港からの帰りの車の中で次々と出てくる涙が止まらなかったのは、イタリアでの生活、最愛の家族、親しい友達と別れた寂しさからではなかった。「感謝」だった。運転する母の隣に座りながら、私は感謝の気持ちでいっぱいだった。私の10か月という長い留学を許し、送り出してくれた家族、AFS、奨学金を出してくださった三菱商事様、私の留学のためにたくさんの書類を書き上げ、前向きに応援してくださった私の担任の先生、明るく私の出発を祝ってくれたクラスの仲間たち、私の留学を陰で支えてくださったすべての人々。そしてイタリアで出会い、たくさんの「愛」をくれた何千もの人々。今思えばなぜかあの生活はもう遠く、幻のように感じるが、私の人生の中でまぎれもなく最高の一年だった。
帰郷してから、私はよく「いいように成長したね」、「いいように変わったね」と周りの人から言われるようになった。そういわれると素直に嬉しくなるし、実は私自身も私の成長をよく感じている。この留学を通した、わたし自身の一番大きな成長は人生の「夢」をもてたこと、そして考え方が本当の意味で「自由」になったことだ。
留学を終えたあとに、たまたまこんな言葉に出会った。「exchange isn’t a year in your life, it’s a life in a year」私はこの言葉に深く共感した。すべてが新しい環境に一人で飛び込み、人と出会い、話し、共感したり、反論したり。たくさん失敗して、その数成功したり。たくさん笑い、たくさん泣いた。これはまさにわたしの一つの人生だった。その中で、私が本当にやりたいことが分かった。私の夢は国連で世界平和のために働くことだ。私はこの夢がいま頑張る自分の原動力になっているし、この先も本気で一直線に進んでいくつもりだ。
そしてもう一つ、「自由な考え方」だ。私はこの留学で自由＋合理的な考え方になった。はっきり言うと、一生日本にいると、もてない考え方であると思う。私が留学をしたイタリアはものすごく自由だというのが私の印象だ。ただそれは良い意味でも悪い意味でもある。「寛容」であるときもあれば、「無分別」なときもある。はじめはすべてが私の想像を超えていた。わたしは尻込したり、文句を言ったりすることもあった。それは私が、がちがちの日本頭であり、日本のものさしで彼らと彼らの文化を測っていたからだと分かった。それは彼らからすると普通であり、彼らからすると私たちの文化や考え方も異端ととらえられることもあるだろう。
わたしはこの留学を通して、現地の人々、そして全世界からの留学生と交流し、それぞれの考え方を知り、いま世界のものさしを身につけ、これまでのように「人がやっているから」と、ただ物事に従うのではなく、何かが道理に合わないとき、理不尽な時には、自分の考え方をしっかりもち、それを変えていく力を身につけられたと自信をもって言える。
最後にこの一年がわたしにくれた本当に大切なものを書いておきたいと思う。「つながり」だ。この一年でわたしの「つながり」は全地球上に広がった。大陸を超えた遠い１つの国に、親愛なる家族ができ、世界中に、私と同じ年をイタリアで過ごし、共感しあった仲間たち、そして親友ができた。そして日本の中でも県、地方をまたぎ、国は違えど同じ留学を夢見、支え合い、いまその留学を叶えた仲間たちがいる。先日、帰国後オリエンテーションがあり、夢や将来を皆の前で語る場面では、それぞれが違った、自身の夢と未来を堂々と語り掛けている姿はとてもきらきらしていて、見ていて誇らしく、とてもうれしくなった。そんな世界中のつながりは、留学が終わった今もなお生き続け、私の人生の宝物であり、支えである。「私はこの一年この地球上で一番幸せだった留学生でした。」と、わたしは私のものさしをもち、自信をもって言う。
私の人生を変えてくれたAFSは、生涯わたしの一部であり続け、世界平和の理念のもとに、私の「つながり」を大切にし続け、全身全霊で生きていきたいと思う。
本当に奇跡のような1年でした。ありがとうございました。Grazie di tutto.
三菱商事高校生海外留学奨学金奨学生
2022年・69期 イタリア派遣 ／ S.Rさん
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