高校2年生だった2012年夏からの約10か月間は、私にとって何にも代えがたい宝物になりました。
私はもともと英語や海外の文化に興味があり、近い将来留学したいと思っていました。高校入学後まもなく学校で交換留学生募集のポスターを見て応募し、AFSと出会いました。
アメリカに行くことが内定してからは、書類の作成をはじめとする準備を進めつつ、受け入れ先の家庭が決まるのをドキドキしながら待ちました。ホストファミリー決定の知らせを受け取ったときに嬉しくて大声で叫んだことは、5年以上経った今でもはっきりと覚えています。

アメリカに渡ったのはそれから間もなくのことです。日本から出ることが初めてだったため正直不安もありました。しかしそれ以上に、留学という夢が叶うことやそこで待っている出会いや経験のことを思い、わくわくして仕方がありませんでした。
到着直後には空港で英語だらけの表示板を見て、英語だらけの会話を聞いて、AFSのボランティアの方にハグで迎えられて、遂にアメリカに来たのだということを強く実感しました。

五大湖の近くにあるオハイオ州の小さな町に派遣され、2週間後には学校が始まりました。すべて英語で行われる授業は決して簡単ではなく、最初の頃は授業後質問しすぎて次の授業に遅れたこともあるし、ほぼ全ての課題にホストファミリーの助けを必要としていました。
しかし、嫌な顔一つしない温かい先生方やホストファミリーに支えられて少しずつ授業についていけるようになり、10月には州の高校卒業試験に特別措置なしで合格することができる程度まで英文を読み取る力がついていました。

また、他の生徒たちと過ごした時間もこの経験をより有意義なものにしてくれました。一緒に昼食をとったり、行事や課外活動に参加したりした中で特に印象に残っているのは3月の修学旅行です。行き先は南東部にあるジョージア州最大の都市アトランタでした。
3泊5日で、昼間は水族館や地下街などの名所を回り、夜は何人かで集まってトランプをしました。普段話す機会がない人も多くいましたが、そういった人たちとも色々な話をして仲良くなることができ、素敵な思い出になりました。

他の国から来ていたAFS生との交流も大きな楽しみの一つでした。オリエンテーションやハロウィン、スキー遠足などといったイベントで集まると、イベント自体を楽しむことはもちろん、それぞれの国の言葉や文化の話で盛り上がったり、アメリカにあって自分の国にないものに、それと似た文化を持つ国の人に教えてもらいながら挑戦したりといった、留学生の集まりならではの醍醐味もありました。

さて、留学生活も終わりに近付いていた3月下旬、私はそれまでお世話になった家庭から引っ越しをしました。その頃ホストファミリーの仕事が忙しく、私が家に一人でいることが多いのを心配したホストファミリー側の申し出によるものでした。
ホストファミリーの親切な計らいで、新しい受け入れ先は同じ学校の友達の家になりました。最初は驚いたし、同じアメリカでも家庭によって習慣の違いはあるのでそれにまた少し戸惑いましたが、新しいホストファミリーもまるで本当の家族の一員のように受け入れてくださり、私は残り短い間でしたが引き続き楽しく過ごすことができました。
2つの家庭での生活を通してより自分の視野が広がり、これもまた良い経験になりました。

その後5月下旬に授業が終わり、約3週間後に私たちは帰国しました。逆カルチャーショックを経験し、とても自分の生まれ育った国に帰ってきたとは思えない時期もありましたが、同じように留学していた友達や自分の経験に興味を持ってくれる人たちと話すうちに頭の中の整理がつき、2つの文化それぞれの中で自分の好きなところを上手に取り入れて生活できるようになりました。
また、2つのホストファミリーや留学中にできた友達とは今でもSNSで繋がっていて、時々手紙やメッセージカードを送りあうこともあります。
また、3月の修学旅行で行ったジョージア州に大学2年生になって半年間留学したのですが、その時には帰国前にオハイオ州に“帰り”、両方のホストファミリーや一部の友達と会うことができました。

さて、私は留学で英語を身につけ、多くの異なる文化に触れたことで、世界の人々が持つ様々な背景について理解を深め、将来も海外とかかわりのある仕事がしたいと考えるようになりました。
そこで高校を出た後の進路として、地元の大学の、英語を用いて世界の文化や世の中の課題を学ぶ専攻を選択しました。
1年生の時から国際的な問題の歴史的背景を学んで有効な解決策について考える授業を受けてきて、卒業論文は日本が抱える国際的な問題をテーマに書いています。
大学卒業後は地元の金融機関に就職し、地元の人はもちろん、日本に住む海外の人の暮らしにも、そして将来的には地元企業の海外事業展開にも貢献できる人材を目指していきます。

最後になりましたが、生まれて初めて日本を飛び出し、オハイオ州で過ごした10か月間で、私の世界は大きく広がりました。
世界には色々な慣習があって、色々な人がいて、色々なことで泣いて、笑って、百人百色の人生を生きている。色々なところで聞いて頭ではわかっていても、実際見てみるとすべてが新鮮で、新しい発見がありました。
そして私はその経験を通じて自分の学びたいことや目標が以前より明確になり、英語は「好きなもの」から「目標を達成するためのツール」に変わりました。
高校留学の経験には多くの楽しかったことや苦労したことが詰まっていて、私はそこから多くの発見や学びを得ました。この10か月間は私にとって宝物です。だからこそ、このような形で皆様の目に触れることはとても嬉しいですし、もし少しでも皆様のお役に立てたならとても光栄に思います。
拙い文章でしたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

-2012年アメリカ派遣 / 井口優香

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