「え!コスタリカ共和国に決まりましたって。どこだろ、ここ?」
出発前1ヶ月に届いたAFSからの手紙に私は驚いた。
「だから言ったじゃない!あまり知らない国を書かないようにって!」と母が困惑していた。

当時は第1-第5候補を希望できるシステムであった。
私は当初社会福祉と伝統刺繍を学びたい思いからデンマーク、スウェーデンを第1、2に挙げた。第4、5には“英米以外のメジャーな外国”であるドイツ、フランスを書いた。
第3候補を選ぶのに最も時間を要した。留学ガイド本をめくる中で『陽気で踊りが好きな国コスタリカ』というフレーズに目を留め、「楽しそうだな、書いても第3だし」と気軽に申請した。
そういう経緯であったのに、コスタリカでの経験は今の人生に多彩な影響を与え続けている。

コーヒー農園でコーヒーの実を収穫した時の様子

「マミー!パピー!何か変、どうなってんだろ、私?。
気持ち悪いし、尿が麦茶みたいな色だし、便が真っ白だよ。
あー、でもおなか空いたー。」
「何言ってるの?きょうこ、食べたいなら好きなだけ食べればいいけど、
ちょっと待って。あー。寝てなさい。学校は休み、しばらく休みね」

滞在3か月目、生活にだいぶ慣れた頃の朝、自身の身体の変化に驚いた。気持ち悪い。吐く。でもお腹が空く。
これは病気なのか?内科医であるパピー(ホストファーザー)は穏やかに私にベッド上安静を指示した。
「パピー!いったいどうなってるの?」
「きっと肝炎だよ。ゆっくり寝ていなさい」
「え?肝炎?私、病気なのー?」

医療従事者である今の私には、これがA型肝炎と理解できる。その前にイースターで友人家族と山奥の小屋に滞在した時に無意識に飲んだ水がおそらく原因だ。そして数日間で軽快する。
異国で体調悪く横になっているのは辛かった。周期的に不安の波が襲ってきた。そんな時私を支えてくれたのは皆の笑顔だった。変わらず明るく接してくれた。「そのうち良くなるだろう」と思うことができた。

この経験があるからなのか、今職場にいて病気で在日外国人およびその家族が来院すると自分の専門外でも何か出来ないかと考える。
紹介状をもらった先の外来予約が満員で入らないのを外国人だから予約不可と誤解していた人と病院の間に入って予約をとるサポートをしたこともある。
不安や心配を共有することは出来ないが、心情を汲み取ることで少しでも和らげばと考えている。

留学出来る国がとにかく多種なのがAFSの魅力である。そこに身を委ねて未知の国で経験を得る、帰国後は自然と縁ある方向にあらゆる体験が繋がってくる。
だからこれから留学を考えている若い人達には気負うことなく挑戦してほしいと思う。

高校での様子
高校での様子

-AFS37期(’90-‘91)コスタリカ派遣 髙村恭子
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