「想像もつかない世界を見てみたい。」その思いでタイへ留学して3ヶ月。この国の生活は、日本で生まれ育ってきた私の価値観を粉々に砕いてくれた。
今私はバンコクの郊外で、ファミリーと共に綺麗な家でさほど不自由のない生活をしている。キラキラしたショッピングモールの中で新しい家具を買い、ブラザーのおもちゃを買い、美味しいご飯を食べて、帰る。たまに旅行に行って、思う存分遊ぶ。
着いてから学校が始まるまでの二週間は、タイの生活は大して日本と変わらないなと思った。だが一歩外に出れば、全く違う世界が待っていた。
通学中に通る市場には、いつも物乞いの人がいる。日焼けで真っ黒、髪はボサボサ。服も汚いし、地面に裸足で座っているから足は変形している。その前を、たくさんの人が急ぎながら通っている。
学校の前の歩道橋にも、いつも座って物乞いをしている小さな男の子がいる。音程も何もない下手なリコーダーを吹いてお金をもらおうとしている。ずっと、ずっと。
そう。貧富の格差が激しいタイでは、こんなこと当たり前なのだ。
そんな人の前を通るたび、心が痛む。苦しくなる。でも、私は怖くて何にもしていない。何もせずに、のうのうと留学生活を楽しんでいる。
タイの人は皆優しい。どこに行っても笑顔で留学生の私を迎えてくれる。学校に行って友達と過ごす時間は楽しいし、家族と過ごす時間も幸せだ。意識しなければ、目の前の現実を見なくなってしまうほどに。
物乞いの人だけではない。鉄骨むきだしの今にも崩れそうな建物に、シートを張って住んでいる人がいる。病気を治すお金がない生徒のためにカンパをしている。これが、タイ。日本とはぜんぜん違う国。
道を歩いても、テレビを見ても、友達と話しても、日本と違う所がたくさんある。全てが私にとって勉強だ。考えることを止めてはいけないと強く感じる。異文化を知るとは、きっと考え続けることだと思うから。
残された留学生活は7ヶ月。タイは私に何を教えてくれるのだろう。きっと日本では知ることのできない、大切なことを教えてくれる。もっともっとたくさんのことを知って、成長したい。
2015年7月 タイより
AFS62期生/クン・サナン奨学生 鈴木璃子
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