息子が留学したいと言い出したのは、翌年の2月の61期冬組出発まで4か月を切った10月下旬のことでした。
以前から息子が海外留学に興味を持っているは知っていましたが、まさか!これが現実になるなんて夢にも思っていませんでした。
本人が派遣先に選んだその国は南米チリ!…その頃の私はチリや南米の方々に対し申し訳ないほど大変失礼な誤解と偏見を抱いていたわけですが、『南米=遠い』『南米=治安が悪い』『南米=ラテン気質の能天気な性格』そして馴染みのないチリという国・・・どれをとっても親の私にはマイナスのイメージしかありません。
しかもせっかく1年間も留学するのに英語圏ではないなんて!あり得ない!と思いました。
しかし本人の強い意志は変わらず、結局以前AFSで留学を経験されたお子さんのご両親に相談しました。
そこで教えられたのは「英語圏でない国の方がむしろ面白い体験が出来るのでは?」また、「派遣先が遠い近いは関係ない!一旦海の外に出たら何処も皆同じ!」など他にも前向きなご意見やアドバイスを沢山いただき背中を押されるように決断いたしました。
そこからが我が家にとって戦いの始まりでした。
出発まで僅か3か月と少し、膨大な資料と提出書類、学校とのやり取り、費用の捻出、パスポート、ビザ、健康診断、各種の証明、出発のための準備や買い物、オリエンテーションや大使館へ出向く為の東京や大阪への往復・・・悩み、迷い、衝突することも一回や二回ではありません。今思い出そうとしても何をどうしたのか思い出せないほど多忙な毎日でした。
時間がなかった為、本人が自分で出来ることに親は極力手を出しませんでした。その甲斐あってか2月20日の出発当日までに親の目からは本人なりの成長を感じました。
思えば「留学する!」と決めたその日から既に海外留学のプログラムは始まっていたのだと思います。
チリに到着して間もなく、ホストファミリーの勧めでインターネットを使って本人と話をすることが出来ました。
日本では子どもの成長の為にもあまり連絡を取り合わない方がいいと聞いていたので少し戸惑いましたが、ホストファミリーいわく「家族なのだからもっと話をするべき」とのことでした。その考えのお陰で1年間安心して息子をお任せすることが出来ました。
このようにチリの人々は家族や仲間をとても大切にする心温かで情け深く愛情溢れる国民性であることを知りました。実際息子にも本当の家族として大切に接していただき、一度もホストチェンジすることなく大きなトラブルもなく無事留学を終えることが出来ました。
息子はこの一年でスペイン語の習得のみならず広い世界観、人間の多様な生き方など様々な価値観を身に着けることが出来ました。これは実際その場所の空気を感じ、いろいろな人々に出会い、経験し触れなければ身に着けることはできなかったと思います。
AFSは世界中のボランティアスタッフとホストファミリーが無償で各国の留学生を受け入れてくださっています。ここでいただいたご恩や感謝の気持ちは決してお金で得られるものではありません。
世界中の一人でも多くの高校生が海外留学を経験したならば相互の理解が深まり地球はもっともっと平和になるのではないでしょうか。
今回息子が留学を経験して感じたことは、高校留学を決断するハードルは思っている以上に高くはないということです。
ほんの少し勇気を出して一歩踏み出したなら人生を大きく変えるチャンスになるのだと信じます。
これは子供を送り出す親にも同じ事が言えるでしょう。
私自身息子を通して大きく価値観を変えることが出来たことを大変嬉しく思います。
最後になりましたが、AFS旭川支部の皆様はじめ全ての職員の皆様、国の内外を問わず息子をサポートしてくださったボランティアスタッフの方々、そして南米チリのホストファミリーであるゴンザレスさんご一家に心から感謝申し上げます。
Muchas gracias. そして、 Nos amamos Chile!
AFS61期生 チリ派遣生保護者 谷島佳代子
(北海道・旭川支部)
▼派遣生 留学レポート「チリと共に生きた一年」
▼高校生・10代の年間留学プログラム