外国で学ぶ、という体験はこれ以上ないくらい素晴らしい体験です。言葉を学ぶ、という事だけではなく、視野が広くなるのがはっきりわかります。高校時代に留学をすることより価値があることがあるだろうか、と思う程です。
現在、僕はアメリカ合衆国のメイン州の高校に通っています。ここでの基本的な僕の生活パターンをいうと、ウィークデーには学校へ通い、帰宅したら勉強したり、時々はスポーツの試合を観に行ったりします。こちらでの生活は日本にいた時よりもずっとゆったりとしていて、色々なことについて考える時間があります。週末には大体家でゆっくりして、勉強したりスポーツの試合に行ったりしています。
では、本題へ行きましょう。
こちらでの体験で、具体的なことでお話したいことが7つあります。
1つめは学校のハード面にについて。
僕が選択しているのは三角関数、微分準備、化学、物理、英語、歴史、運動、それにスタディ・タイム(自習時間)です。授業は84分で1日につき4コマです。授業と授業の間の休憩はぴったり4分、昼のランチタイムは21分です。すごく変わったタイムスケジュールです。
時間割は1日おきにAスケジュールの日とBスケジュールの日があって、交互にそのカリキュラムで授業を受けます。クラスにはジュニアとシニア(3年生と4年生)の生徒がいて、通常たくさんの小テストがあって、大きなテストはありません。ただ、2学期末にある中期テスト(Mid-term test)と学年最後にある学年末テスト(Final exam.)はあります。数学と科学はすごく易しいです。
そして、そして・・・大勢の生徒が車で通学しています!自転車で学校に通う生徒はいません。スクールバスもまた日本のものと全然違います。少なくとも僕の通っていた学校のものとは。こちらのスクールバスは一人ひとり生徒を拾い、また、家へ帰るときにも一人ひとり降ろします。停留所があるのはガソリンスタンドに1つだけです。
2つめはスポーツについて。
学校の間には友達と話す時間はほとんどありません。大げさではなく、本当にほとんど話せないので、(カリキュラムを見たらそうですよね?) 僕の仲の良い友人は部活での仲間です。
こちらではスポーツは夏秋季スポーツ、冬季スポーツ、春季スポーツ3つの季節に分かれていて、それぞれのシーズンに選択します。夏秋季スポーツに参加できると学校が始まる前に友達ができるので、学校の初日にもう知り合いがいてさみしくない、というメリットがあります。それに、ティーンエージャーの英語にも慣れることもできます。
冬スポーツでは僕は最初バスケットボールに参加しました。チームに参加する前にトライアウトがありました。自分でも手ごたえがあり、チームメイトも絶対僕は選ばれるだろうと思ったけれど、代表メンバーには選ばれませんでした。コーチはこれからの2年間もそこでプレイできる2年生を選ばなければならなかったのです。そして僕は1年限りの交換留学生なので、レギュラーには入れなかった。これは学校の方針にもよります。でも、こういうことは起こり得ることです。
その後いろいろ考えた上、バスケットを辞めてインドアトラック競技に入りました。いい決断でした。僕はチーム中1番か2番目に速い短距離走者になり、55m、200m、400m個人走、4X200m Relayの4種目で州大会出場選手に選ばれました。同じくらいのタイムで走る仲間は、僕の1番の友人のひとりです。彼は僕をインスパイア―してくれて、お互いに切磋琢磨して、高めあえる関係です。夏秋スポーツで一緒だったクロスカントリーのメンバーや、新しく友達になった友達・・・インドアトラックのみんなが僕をすごく応援してくれて、いい記録が出せました。後に親友になった女の子ともここで友達になりました。仲良くなった女友達といったけれど、女子に応援されると男子は燃えてびっくりのパワーが出たりもする(!?) 友達がどんなに大切なものなのかを実感しました。
何でも起こり得る、また何であっても、何らかの価値があると思う。だから、ここぞ、という時の決断を恐れないでください。
3つめ。どういう風に夏と9月を過ごすか。
大体の僕たち日本人留学生は、はじめは流暢にコミュニケーションをとる程には英語ができません。英語をスムースに話せるようになるプロセスは「聞く→理解する→文を作る→話す」だと思うのですが、最初の3つは出来るようになるのにはそんなに時間はかからない様な気がします。でも、最後の4番目のステップが考えていたよりも難しい。音を頭の中には音があって、咽喉までくるのだけれど音にならない。言葉がのどにつまってしまうのです。「スムースに話す」という場合に関して言っているのですが。
スムースに話せるようになりたいと思って夏休み中はリスニングとリーディングを沢山やりました。話せるようになるのに最も効果的だったのは友達とつるんで出かけること。本当にそれをしなかったら僕の英語は良くなるのにもっとかかったと思う。はじめ一番簡単な友達と出かける方法は、スポーツの試合を一緒に観に行くことだと思います。ところで高校生のスポーツの試合を観るのにお金がいるのには驚きました。
1か月たった頃には、難しいことを考えられるほど良くも、速くもないけれど、自然に英語で考えるようになっていました。ちょうど、「わかっているのだけど、ちょうどいい単語が解らない!」という感じでした。でもAFSのキャンプで日本語を話したら、再び日本語で考えるようになってしまいました。だから日本語は使わない方がいい。
最初の頃、英語とアメリカ史の宿題が結構きつかったです。特に英語。でも、それはずっと続くことじゃない。僕の場合は数週間でした。だからどうか頑張ってください。最初の1か月はとても大事だと思います。初めの2,3週間は英語と米国史の宿題は大変だった。
でもその後は慣れてきて他の楽しみのための時間もとれるようになりました。今はAP化学とSATボキャブラリーを自習しています。日本にいたときは、勉強は「するべきもの」でした。でも今は「したいもの」になった。この違いは大きいと思います。
4つめ。ハロウィーンについて。
ドラッグや酒を目にする可能性が高いです。それをみて戸惑うこともあるかもしれない。実際、そういう人は結構います。誰がそういうことをしているのか知っておくことが大事だと思います。
5つめ。感謝祭について。
サンクスギビングでは、あまりに食べ過ぎてその後1週間食欲がなくなるほど食べました。サンクスギビングには晩餐で感謝の気持ちを捧げます。メイン州ではこの時期にお店を開けるのは法律で禁止されています。10日の休みがあるビッグ・イベントです。
6つめ。クリスマス。
これは本当に日本のものと違います。そして、すごく素晴らしい。基本的に家族と過ごす日で、日本のようにカップルの為のものではありません。
でもここではあまりお話ししません。驚いてほしいから。絶対、気に入りますよ!
7つ目。ウケたもの。
ハードキャンディ、ハイチュウ、せんべいの評判が良かったです。シャープペンシルを使う人がたくさんいるので日本の「KURUTOGA」はとても喜ばれる。ボールペンはそんなに悪くないけれど日本のものと比べるとかなり違います。日本製の方が優れています。
ここからはこの体験を通して考えたことについて話したいと思います。
日本でこちらに来る前の自分のCASECテストによる判定は、TOEIC換算815、TOEFL換算523でした。だからまあまあ大丈夫かなと思っていた。でも、最初の2週間は苦労しました。日本で学習したのは生きた英語ではなかったからです。だから、あんまり知っている気になり過ぎない方がいい。でないと相当へこむことになるから。
日本のペーパーテストはコミュニケーションを身に着けるためには実用的でない。もっと話すのになれることが大事だと思います。正直言ってあまり進歩していないような感じもする。でも、何に関しても少しずつ成長していくものだし、あわてなくても大丈夫だと思います。けれどまた言うけれど、母国語を使わないことはポイントだと思います。
人間のあいだには多くの違い、人間性とか、intimation(友人、親密な関係などの人との距離とり方、という感じでしょうか)についての感覚とか、諸々の違いがあるということ。合衆国の人たちは奉仕の精神にあふれていて、親切で、ユーモアがあります。だから、友達を作るのに躊躇しないでください。内気にならないで元気にしていれば人を惹きつけます。いろんなところで感覚は違うけれど、例えばいつも一緒に試合を観に行く女友達がいて、彼女は僕のことを好きかな?と思ってデートに誘ったら、彼女はそういう風には僕のことを好きじゃなかった。だけどデート、誘ってみるのもいいんじゃないかな!? 何もしないで後悔したり、モジモジした日本人、って思われたりするよりも!
僕は他の国からの交換留学生と一緒にホームステイをしています。彼はインターネット中毒で家にいるときにはずっとラップトップを使っている。しばしば誰か友達と夜中まで友達とつるんで外泊もする、ホストファミリーの許可も得ずにこれもまた別の生活スタイル。自分のやり方でいけばいい。日本人の交換留学生は時々正直すぎて直ぐショックをうけるところがある様な気がする。でも、ショックをうけないで。違う、ってことなんだ。
近況追記:今日、インドアトラックの練習に行きました。ここにはいつも沢山の仲間がいたものです。でも、今日は違いました。さみしかったです。
ここで大勢の友達が出来ました。バスケットボールを辞めると決めたときは本当につらかった。でも、ここでの友達が悲しい気持ちを完璧に忘れさせてくれました。もうすぐ僕はインドアトラックのメイン州大会に出場します。心から感謝しています。絶対自分ひとりでは成し遂げられなかったことです。仲間たちは素晴しいし、練習がすごく楽しくて、本当に充実した日々を過ごしました。僕がいい走りが出来なくて自分自身に失望していたとき、この素晴らしい仲間たちは僕を慰め、元気づけてくれました。
彼らのうち何人かはアウトドアトラックを次のスポーツに選ばないので、彼らともう、そんなに話せる機会がないのかと思うと、とてもさみしいです。今、僕はトラック競技が大好きです。これが最初で最後のインドアトラックだなんて信じたくありません。ほんとうに、もうすぐ終わりなのだというのが信じられない気持ちです。
州大会では、僕はチームみんなの思いを乗せて走らなければ、と思っています。
2014年2月 アメリカより
AFS60期生/ジャパン・ソサエティーみちのく応援奨学生 額賀紀行
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