アメリカに留学して半年が過ぎた。この半年は私にとって特殊で時間の流れは長くも短くも感じた。一日一日は充実していて長く感じられるが、一度振り返れば全て昨日のことのようにも思いだせる。それほど毎日がいまだ新鮮で楽しいのである。
一番始め、実を言うとシカゴ国際空港に初めて着いたそのときは、アメリカに来たという実感があまり湧かなかった。だが外にでて見れば、車が右側の車線を走り、建物や景観も違っていて「自分はアメリカに来たのだ」という実感が一気に湧いた。
それからホストファミリーと合流し、少し話しただけで自分の英語力の足りなさをいきなり実感させられた。相手が言っていることはある程度聞き取る事ができたが、口がほとんど回らなかった。そして自分が思っていたほど言葉が出てこず、実にショックで悔しかった。もっとできるはずだと思っていた。会話の練習は留学準備の英語の勉強の中では一番やりにくかった。もっと話せるようになりたい、文章が書けても話せないのではダメだと思った。8月中に渡米できた事もあり、学校が始まるまで時差や生活に慣れるまでの期間があった。それが幸いし、時差ボケは一週間ほどかかったが直すことができた。
食事に慣れるのには意外と苦労した。私のホストファミリーはベジタリアンで日常的に肉を食べなかったのである。そして私が住むウィスコンシン州は酪農が盛んなチーズが有名な土地で、食卓にもチーズを大量に使ったものが出される事も多々あった。なかなか重量があるものが多く食べきれないこともあったが、今は出されたものは完食できるほどになった。食生活が変わると胃袋もそれに対応したのだと思った。
また、宗教的な面も私には興味深かった。毎週日曜日の朝は家族揃って教会に赴く。私は強制こそされなかったが興味があったので何度も通った。そこでは人々が集まり、互いの近況を報告し合ったり歌を歌ったり、また小さな子ども達は別室で物語を読み聞かせてもらっていたりした。
教会は私の中では「社交場」という印象が強くなった。熱心に宗教を信仰するというよりは人々が同じ場所に集まるきっかけであり、会話など人との関わりがメインだと思い、とても素敵な事だと思った。また、そこに出向いたおかげで、同じ学校に通う学生に会えて、友達になることができた。一番初めは本当に緊張して人に話しかけることがすごく難しく感じられた。だが話せたときはその分とても嬉しかった。
学校に通い始める際、自分で受けたい授業を選択できた。私の学校はギターや油絵、演劇など幅広い選択肢の中から選ぶ事ができたため、受ける授業の選択はまるでレストランのメニューから選りすぐりの料理を選ぶような感覚だった。一度決めても、「やっぱりこっちの方が…」となかなか決断できず、時間がかかったが楽しかった。授業の自由選択という方式は人それぞれの個性を伸ばすにはとても良いきっかけになると思った。教会で出会った友達のおかげで校内の教室の場所もスムーズに覚えることができた。学校初日はいろいろとバタバタした。
アメリカの高校と言えば、専用のロッカーだが、まず「コンビネーションロック」と呼ばれる鍵がそもそも開けられなかった。初日には授業は始まらず、クラスメイトと先生の自己紹介で終わった。緊張したが始まりはあまり大きな問題もなかった。
しかし学校で友達を作るのは簡単ではなかった。他のアジア人の珍しい地域では何もしなくても目立ち、話題の種になりやすいのだが、私の学校はアジア系の移民が多く、日本人が1人交じったところで見栄えは変わらない。私は人見知りで内気な面もあったので最初の数日はそれと語学力の欠如も合わさってほとんど話す事ができず、辛かった。
上手くいかなかったので方向を転換した。無視をされたり伝わらなかったりする事を覚悟し、緊張で高鳴る心臓の鼓動も無視して関わる人ほぼ全員に話しかけた。結果、話しかけた人のほとんどがにこやかに会話に応じてくれた。話を聞くと私が全然口を開かないから話しかけにくかったようでやはり「自発的な行動」を勇んですることが大切なのだと思った。それからは友達の友達とも友達になるという我ながら軽やかに人から人へと通じて学校生活を豊かにしていった。
それからは少しずつではあったがだんだんと耳も会話にも慣れてコミュニケーションがとりやすくなった。ホストファミリーともだんだん仲良くなって今では互いにアメリカンなジョークを交わし合うほどである。週末は友達と遊んだり、日本の料理を作って振る舞ったりして実に楽しい。
例を挙げると、学校の友人達にお好み焼きを作った時、鰹節が動くのを見て「すごい!生きているのか?これは生きているぞー!」と叫ぶなど、なかなか斬新なリアクションを見ることができてとても新鮮だった。また今年に入ってから前から気になっていた演劇とギターの授業をとって自分には今までなかった想像力や表現力を養おうと現在取り組んでいる。
この留学を通して、内気で人見知りしがちだった自分が、「積極的に人と知り合いたい、もっといろいろなことを知りたい」そう思うようになり変わっていることを確かに感じている。アメリカに来て、現地の人々や他国から移り住んだ多くの人々と実際に知り合い交流し、国民性の違いをお互いに垣間見たり見せたり、ディベートをしたりするのはとても面白く、今まで知ることのなかった考え方や表現に出会う事ができた。残り半年も悔いのないものにできるようにできることをできる限りして毎日が日常に変わらぬよう多くの発見と異文化体験をこの身に浸透させ、自分だけでなく友人や私と関わる人全てが母国である日本とも繋げていきたい。
最後に、AFSのスタッフ様、ジャパン・ソサエティーの皆様。本来、自分の環境では難しかった留学という素晴らしい体験をさせていただき本当に感謝の気持ちでいっぱいです。残りの半年も情熱と意欲を燃やして多くの事を学んでいきたいと思います。ありがとうございました。そしてこれからも何とぞよろしくお願いします。
2013年2月 アメリカより
AFS59期生/ジャパン・ソサエティーみちのく応援奨学生 三浦永太郎
▼帰国後のレポート「I would never forget about my wonderful year」
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