空港で家族にこれから1年会えなくなるとは思えないような陽気な雰囲気で送られ、なんともいえない気持ちで成田空港を後にして早約5ヵ月が過ぎ、僕の留学生活も残り約半年となってしまいました。タイに来てまず思ったことは暑さと料理の辛さと人々の眩しいくらいの笑顔です。
タイの気候は大きく分けて暑季、雨季、乾季の3つです。タイ人に尋ねると暑い、すごく暑い、死ぬほど暑い、と笑って答えてくれます。今は雨季の終わりがけで雨もだんだんと少なくなってきましたが、雨季の真っただ中、6・7月は毎日のように大粒の雨が晴れていてもいきなり降ってくるので大変でした。10月頃からは乾季に入り、大分過ごしやすくなると聞いたので楽しみです。
そしてタイ料理。タイ人は唐辛子が大好きでほとんどの料理に入っていて、好きな人は生でポリポリかじって食べるくらいです。毎回ご飯を食べるときは僕一人だけ大量の汗を流しながら一生懸命食べています。友達や家族が毎回そっとティッシュを渡してくれるので少し申し訳ない気持ちになりつつ、なぜタイ人は平気な顔をして食べていられるのだろうと不思議な気持ちです。それでもやっぱりタイ料理は美味しいので毎日幸せです。
そして最後に笑顔。『微笑みの国タイ』と言われているのは知っていましたが、実際に現地の人々に触れるとそのことを改めて実感します。全く知らない屋台のおばちゃんでもあいさつをすれば笑顔で返してくれる。だからこっちも自然と笑顔になる。他にも笑顔のことを含めてタイの魅力を語り始めるとキリがないので、この辺でやめておきます。
僕がタイに来て今まで、よく考えるようになったのは家族というものについてです。僕は日本では寮生活をしていて、家に居ることは稀です。それでも久しぶりに家に帰ったときはお母さんがご飯を作ってくれて、お父さんも定時に帰ってきてくれて、家族みんなで食事をします。みんなで食事をするのが当たり前で、中々2階から降りてこなかったりすると怒られたことさえありました。
しかしタイの僕のホストファミリーでは違います。お父さんは仕事で家におらず、子供たちは好きな時間に好きなものを近くのコンビニなどで買ってきたり、インスタントラーメンで済ますことが大半です。そしてお母さんも料理を作ることは稀です。外で買ってきたものがあるのでそれを大体毎日一人で食べています。今まで家族全員で食事をしたことなんて一度もありません。お母さんもお父さんの仕事のお手伝いで休みがなく、子供たちは毎日学校帰りにご飯を食べて帰ります。
どういう家族がいいかなんて人それぞれで、国によっても違うから正解なんてないんだと思います。この5ヵ月間で違った家族と過ごしたのはいい経験になったと思っています。僕は出発する前から半年したら家族が変わることが決まっていたので、もう少しで新しい家族のところで行く予定です。そこではまた新たなタイの生活がスタートします。そこからは気持ちを新たに切り替えて、さらに多くのものを吸収したいと思います。
タイに来て一番驚いたこと、それは人々の王室に対する敬愛です。以前にこんなことがありました。ある学校主催のキャンプに参加した時のこと、新聞を小さく折り畳んでいまより小さなものに3人乗れたグループが勝ちというゲームをしました。その時僕の後ろにいた同い年の女の子が「上の方に王様が写ってるわ。代えてもらえるかしら」と言ったのです。これはいつまで経っても忘れることはできません。町中で王様への敬愛の言葉が書かれた看板などはよく目にしますが、あんな小さな写真、それも隅っこに写っていたのですから。タイ人は王様への敬愛を通して、どこかでみんなの心が繋がっているような気がします。
最後になりましたが、この留学を通して僕を支えてくださったAFSの方々、家族、友達、そしてかめのり財団様に深く感謝を申し上げます。
2012年8月 タイより
AFS59期生/(公財)かめのり財団奨学生 清水淳史
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