中国に来てから約半年が過ぎました。私の中国での生活は順調で今まで特に困ったことなどもほとんどありません。しかし中国に来てから驚くことはたくさんありました。
バスを待つのに並ぶ人はいません。
ゴミ箱があっても使う人はごく少数です。
日本人に敵意を向けてくる中国人も多くはありません。
親が子供に求めるものは主に成績です。
おかずの味付けが八割同じです。
学校の先生は綺麗な標準語をしゃべりません。
お年寄りと会話をしていると、宇宙人と会話をしている気がします。
どこに行っても人の山です。
自転車に乗ってる人はほとんど見かけません。
チャイナドレスを着ている人なんて一人もいません。
中国に来る前に持っていた中国という国へのイメージは当たらずも遠からずといったところで、どう頑張っても理解できないこともたくさんあります。
私には中国で同じ学校に通っているイタリアからの留学生の友達がいます。その子の家には一人ホストブラザーがいて、彼は冬になると必ず冷水でシャワーを浴びるそうです。理由を聞いたところ彼のお父さんが「冷水でシャワーと浴びろ!そうすれば真の男になれる」という教育をしているからだそうです。いくら中国の南のほうだとは言え、冬になれば気温がマイナスに近づくことも少なくありません。そんな中で彼は毎日冷水のシャワーを浴びているのです。
私の友達が彼に「もしも大人になって息子ができたら同じことをする?」と聞いたところ「もちろん」と答えたそうです。中国の伝統的な教育法なのかは分かりませんが、それを聞いたときはさすがに苦笑してしまいました。
私の家は比較的普通というか、常識がある家なので妹も私も毎日暖かいシャワーを浴びています。私はホストファミリーの運がよかったようで、お父さんもお母さんも私に、実の娘のように接してくれます。朝は毎日お父さんが妹を学校まで送り届け、お母さんが私をバス停まで送ってくれます。妹と揉めた時もお母さんは真ん中の立場から悪いほうを叱ります。
おばあちゃんは最近よく「春花が日本に帰る夢をみたんだよ。帰っちゃったら寂しいね」と言ってくれます。
おじいちゃんはたまに、昔あった日本と中国との戦争の話をします。おじいちゃんもおばあちゃんもそのころの事を覚えているようで、記憶を引っ張り出して私に聞かせます。そして最後には必ず「日本軍は嫌いだけど、日本人みんながあんなことをするわけじゃないね」と言います。
今回中国に来て一番よかったと思ったのは海を越えて新しい家族ができたことです。まだ中国に来てから半年ですが、本当に家族のような関係を築いているような気がします。
学校でも同じように周囲の人に恵まれています。漫画が大好きなクラスメートや、何でも相談にのってくれる先生、聞き取れなかった授業の説明をしてくれる友達。みんな日本人だからと言って無視したりすることなく、むしろ積極的に話しかけてくれます。時間があれば、中国人の友達と一緒に遊びに行ったり、先生の家でご飯をご馳走してもらったりすることもあります。ある友達は、「春花が来る前は日本って言う国も、日本人も嫌いだった。でも、今はそんなことは思わないよ」と言ってくれました。
実は私も中国という国が好きかと聞かれたら、好きです。と自信を持って答えることはできません。しかしここで過ごした半年のおかげで自信を持って、「中国人が好きです。」と言えます。
私はここまで半年の留学生活で多くの事を学びました。最近一番よく思うことは、もし自分が中国に生まれて、中国人として育っていたとしたら?ということです。ごみを道に捨てることが当たり前になっていたのでしょうか?日本を嫌いになっていたのでしょうか?
今の私を作るものはすべて今までの17年の人生で、親、兄弟、友達、色々な人がいて、ただ道で一瞬すれ違っただけの人ですら今の私を作り上げている一つの要素だと感じるようになりました。私は今、日本人として生まれてよかったと心から思います。それは中国人になりたくないからなどではなく、純粋に今の自分に満足しているからです。
この留学という機会を与えてくれた両親、AFSの皆さんそして何より、かめのり財団の皆さんに感謝します。
まだ中国での留学生活は半分ほど残されています。これからの半年も悔いが残らないように、人生で最高の思い出になるように、楽しみたいと思います。
2012年4月 中国より
AFS58期生/(公財)かめのり財団奨学生 中山はるか
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