2014年8月から15年7月までイタリアの高校生マッテオ君をお預かりしました。この1年前にスペインの男の子を4か月間預かったことがあり今回は2回目、そして意外にも前回むすっとして楽しくなかったかのように見えた夫からの一言「また、誰か来ないかな」から始まりました。
約1年という期間もありましたし、何も知らずに引き受けた前回よりも不安は大きかったです。それでも決心したのはやはり違う文化の人々と心をかよわせる喜びを前回知ったからです。
マッテオの第一印象は線が細くてきちんとしていて優秀で(リチェオ、というエリート校に行っているそうです)大阪弁で言う「ええしのぼんぼん」でした。
これで大ざっぱな我が家でやっていけるのかしら。優秀で支部ではスーパーヒーローのマッテオでしたが初日の一言をホストマザーは聞き逃しませんでした。
「I’m scaring」
え?ビビっているの?私の母親魂に火が点きました。
我が家を休める場所にする。グチや彼女への未練話を精一杯聞く。「No more Japanese」と言われてもへたくそな英語でとにかく話す。頑張り過ぎていたら休みなさいと伝える。落ち込んだらおいしいものを食べさせてあげる。
英語以外は普通に我が子への対応と一緒です。その「英語」もすぐに「簡単な日本語で」に変わりました。
私がマッテオに望んだことは日本でたくさんの人に出会い、たくさんの考えを知って、日本とイタリアのいいところを発見してほしい、ということでした。そのためにも日本語の習得は必須でした。
幸い、好奇心旺盛な子で、漢字に興味を持ったのをきっかけに言葉をどんどん覚えていきました。覚えた日本語で電車でお隣のおばさんに話しかける、お店の店員さんに日本語をほめてもらう、それが嬉しくてまた言葉を覚える。そうやって彼の日本語はどんどん上達していきました。
彼曰く、日本の文化はヨーロッパから一番遠くて一番違う文化だそうです。だから、おもしろい。目上の人を敬う縦社会、文化祭や体育祭で一つの目標に全員で力を合わせる協調性(イタリアでは学校行事は全くないそうです)、すべて興味深い。頭のいい子で、吸収した知識を自分の言葉で自分の意見に換えるところが素晴らしかった!
イタリアでは口頭のテストが常に行われていてそこで自分の意見を述べるための知識のストックだそうで、日本の(私の世代だけ?)知識偏重教育を考えさせられました。
そんな彼が広島を訪れて、見て、感じて、言葉にした集大成が1月のスピーチコンテストでした。イタリアでも学習して知っていた広島の原爆を彼はその場所に立ってしっかりと感じとってくれたのでした。とても嬉しかったです。
日々のハプニング、イタリアでは~日本では~というやりとりは枚挙にいとまがありません。言葉の壁に加え、世代の壁、デジタルの壁、二重苦三重苦です。それでもこの10か月を楽しんで過ごせたのは、いつでもどこでもマッテオが驚きと感動と「ありがとう」を伝えてくれたからだと思います。
マッテオ こちらこそありがとう A presto.
2014年にイタリア留学生マッテオくんを受け入れ
Kさんファミリー(大阪府)
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