堀田一芙さんは、この講演を通して生きる喜びを人と分かち合うことの醍醐味を伝えてくださいました。そのご活躍の広さや深さは常人の想像の及ぶところではなく、真似できるところだけ少し真似してみようかな、と足の指を100回ずつ回そうとしたわたくしは一本目で挫折しました。
堀田さんは東北のマタギの師匠について日本ミツバチの飼い方を学び、師匠から「横浜のマタギ」と名乗ってもいいと言われた方で、お庭で日本ミツバチを何万匹も飼っておられます。日本ミツバチの世界では巣から出ていって新しい巣を作るのはお母さんのほうで、古巣は娘に譲るそうです。役割も分かれていて、巣を守るのは若い働きバチ、蜜を探しに行くのは年配の働きバチで、かれらは外敵に襲われることも覚悟の上で片道分の蜜しか持っていきません。こうした行動は、年寄りがリスクを負うことによって種を守る、大いなる自然の知恵である、と堀田さんはおっしゃいます。

また立ち上げられた「熱中小学校」という活動では、「もういちど7歳の目で世界を。。。」を合言葉とする好奇心溢れる大人たちが熱中できる学びの場を作っておられ、現在全国に16校あり、先生をする方々は手弁当で日本中を回っておられるそうです。
またこれとは別に「食の熱中小学校」も主催しておられます。受講生は首都圏に住む方々で、座学だけでなく実際に旅をして地方の生産者を訪ね、普通の旅行ではできないような体験をさせてもらい、それを通して互いの価値を高め合おうとする学びの場です。「食の熱中小学校」では各地の人たちがこのような概念の食のツアーをプロデュースできる場を提供しようとしています。

自分たち年寄りが行動することによって若い人にタスキを渡したい、という思いを堀田さんは着実に実現しておられるようです。活動の概要だけ伺うと「そういう活動がお好きなのだろう」と早とちりしてしまうかもしれません。わたくしも単純に「すごい」と思いました。しかし講演の後半で堀田さんが語られた率直な言葉に感銘を受けました。
「新しいことを始めるにはストレスがある。必ずある。それを庭が癒してくれる。自然人とお付き合いすることでバランスを取ることができる。」「人材がいていいね、とよく言われる。でもそれは違う。困って、頼んで、助けてもらって、一緒に走っている。」「生まれた家の庭を三代続く植木屋さんと力を合わせて維持してきた。」それらを恵みと感じるか、重荷と感じるかで人生は変わります。堀田さんは日本ミツバチを飼うことで庭を恵み溢れる場にし、庭木を切り薪にして暖をとり、煙で風を読み燻製を作り、人と語り合う生活を送ってこられました。
「自然を通して摂理を知り、人を通じておのれのバランスをとる」のです。
そのためには元気が必要です。毎朝続けておられる足の指回転一本につき100回ずつ、ヨガとストレッチ、水ごりの行・・・何と誠実な方なのでしょうか。
井手洋子(AFS13期 1966−1967 USA)
堀田一芙さんのプロフィール:
1947年神奈川県横浜市生まれ。慶応義塾大学経済学部、インディアナ大学経営修士卒業。日本アイ・ビー・エム(株)において常務取締役としてPC、ソフトウェア事業などに携われました。
退職後、2019年に一般社団法人熱中学園を創設し、代表理事に就任。熱中学園は、「もういちど7歳の目で世界を…」を合言葉に、さまざまなまちに展開する大人の学び舎として、地方創成のための学びの活動「熱中小学校」や「食の熱中小学校」を展開し、2025年2月からは、のと復興音楽ツアーを開催しています。
また日本ミツバチ養蜂家として、ご自宅で数万匹ものミツバチを飼われています。
ご著書に「老いてからでは遅すぎる」(海辺の出版社)
エッセイ集 https://www.korobocl.com/
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