「ウクライナの戦争が私たちに問いかけるもの~日本人は危機の時代をどう生きるのか~」
今回のスピーカーは1970年にYP17期で米国ウイスコンシン州へ留学された高世仁さん、大学を出てから長年報道関係でグローバルな活動をされています。これまで北朝鮮の拉致問題やチェルノブイリ原発事故、ミャンマー内紛、香港の民衆運動、アフガニスタンの中村哲医師足跡など、リスクの高い現地に出向き、ありのままの実情を取材し、ドキュメンタリー番組の制作、本執筆など精力的に活躍されており、71才になった今もフリージャーナリストとして活動しています。
高世さんは、昨年10月にウクライナで激戦の続く東部・南部戦線に出向き、日本人記者が踏み入れない戦場の実態を様々な角度から取材されました。その取材内容は昨年11月にBS11でもTV報道されていますが、今回の講演では、戦地で暮らしながらロシアに抵抗するウクライナ民間人の生活の様子や生の声を、写真やエピソード、データなどで具体的に紹介されました。
二年以上も戦闘が続くウクライナですが、ロシアとの闘いは実際には2014年にロシアがクリミア半島を制圧した2014年から10年余りも続いています。ロシア本土からミサイルが飛んできても、ウクライナは国境を越えて直接反撃できず、手足を縛られたようなジレンマを抱えながら苦しんでいるのは軍人だけではありません。これまで無抵抗のウクライナ市民に対する攻撃・虐待・蛮行を繰り返すロシア軍に対し、一般庶民は自分達ができる形で「ロシアへの抵抗」を続けていることを今回の高世さんの取材から知りました。
講演の後半は、ロシアのウクライナ侵攻をはじめ、世界のあちこちで起きている戦争や内紛に対し、今の日本人の危機意識について高世さんより問題提起がありました。第二次大戦で敗戦した日本は、憲法であらゆる戦争行為が禁止され、平和な世界を目指してきました。日本はロシア・北朝鮮・中国などに囲まれた島国ですが、幸いにもこれまで外敵から侵略はなく、有事を経験せずにきました。アンケート結果を基にした高世さんの説明では、日本人の国に対する誇りや国を守ろうとする意識は薄く、グローバル社会では極めて特異な存在であることも示しています。
また戦争や内紛で自国から逃げ出してきた難民や困窮する人々への救済という観点についても、日本人は消極的であり、無関心な人が多いこと、そして今の日本人は、自分達の幸せや楽しみを追い求め、自分の利益にならないことには関心を示さない人々が増えているという指摘も事実だと感じました。
今回の高世さんの講演は、このような状況下で将来の日本は大丈夫なのか、より複雑化するグローバル社会において危機の時代をどう生きていくべきかとの警鐘を鳴らしており、100名近くの視聴者一人ひとりが深く考えさせられる含蓄のある内容であり、講演後も共感するコメントや質問が多くありました。これからも高世さんからの情報発信に注視していきたいと思います。
(文責:AFS YP17期 山本明男)
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