9月17日、台風来襲直前の穏やかな初秋の土曜日に、諏訪清陵高等学校に於いて、標題のイベントが行われました。
普通の留学説明会とも留学生との交流イベントとも少し違う趣の今回の行事の発端は、今から50年以上も前に遡り、一人のAFS派遣生の話から始めなければなりません。
当時、諏訪清陵高校生だった赤羽恒雄さんは、AFS第14期生としてアメリカに派遣されました。1967-68年の話です。派遣先はアメリカ中南部のオクラホマ州。アメリカ人でも行ったことがない人の方が多いくらいのアメリカの大自然の中の州です。
恒雄さんはAFSの多くの留学生がそうであるように、初めて見聞きする異文化を貪欲に吸収して、聖歌隊やアメフトを楽しみながら勉学に勤しみ、留学が終わる頃には現地校のアメリカの同級生よりも優秀な成績を修めたそうです。帰国後、早稲田大学に進学し、さらに再びアメリカの大学で学位を収め、国際政治学の分野で大いに活躍された偉大な研究者となられました。公私にわたって世界中の人々と繋がりを持ち、若い研究者の育成にもご尽力されました。
残念ながら、赤羽恒雄博士は2021年11月にこの世を去ります。アメリカで結婚され、お子さんにも恵まれました。ご家族は恒雄さんを偲び、次世代のために何かを残し、恒雄さんの志を後世に伝えたいと、AFS日本人派遣生のために新しく、奨学金の基金を作ることを希望されました。
今回、コロナの入国制限も漸く緩くなり、恒雄さんのご家族が来日される運びとなり、それに合わせて、恒雄さんの母校の長野県諏訪清陵高校で、国際交流イベントを開催することができました。
諏訪清陵中学、高校の生徒さんも多数集まり、保護者様にも足を運んでいただきました。
普段の留学説明会ではなく、まずは生徒さんの大先輩である赤羽恒雄さんの人生の紹介をご家族にしていただきました。
「父は自分のプロフィールに『世界市民』と書き込んでいるところからもわかるように、世界中の人たちと国境を超えて仲良くなり、その絆を大事にしました。それは10代の後半にAFSでアメリカ留学したことが原点です。人間は一人ひとりがユニークな個性やスキル、価値観を持っていて、より広い世界を知ることで、自己のアイデンティティーを強く意識することになります。そしてそれが、より充実した人生、素晴らしい世界との出会い、となるのです」(長女赤羽ミッチーさん談)
「留学は1年限りのことではなく、その後一生続く絆を創ることになります。恒雄が留学した先のホストファミリーは留学後も折に触れ、会う機会を作ってくれました。もちろん、私たちの結婚式にも来てくれましたし、子供が生まれたら、会いに来てくれました。そして最後には、恒雄を、家族のお墓に埋葬してくれました。1年いただけのゲストではなく、本当の家族になれたのです」(妻赤羽ジャネットさん談)
赤羽さんのお話の後は、69期イタリア派遣帰国生の帰国報告の発表です。短い限られた時間の中で、イタリアという国の、住んでみなければわからない、びっくりしたこと、いいなと思ったこと、などなど、ユニークな語り口で参加者の注目を集めました。留学は充実することばかり、楽しいことばかり、ではない、留学中の苦しかったこと、それをどうやって乗り越えたかを語ってくれて、多くの人たちから「心に響いた」と言っていただけました。やはり、直接の体験者(しかも身近な)の言葉はインパクトが強かったようです。
赤羽さんの同期生の諏訪清陵同窓生の皆様も多数来場され、AFS留学の価値ある体験について発表していただきました。
後半は支部にいる8名の留学生との交流タイムです。4つのグループに分かれて「好きな日本の食べ物」「大事にしている母国語の言葉」を披露しあってもらいました。言語は日本語でも英語でも何語でも! 通じ合うことが大事、として、自由に語ってもらいました。赤羽さんご家族も入っていただきました。食べ物の話は笑顔や共感を生むのか、短い時間でしたが、打ち解けていったようです。留学生からはラーメン、たこ焼き、カレー、天ぷらなどなど。長野県のぶどうの美味しさに感動した、という生徒もいました。果物王国、長野ならでは、です。日本人生徒さんからはお味噌汁やおでんなど、これからの季節、温かくほっこりできる、と教えてもらえました。
「大事にしている言葉」はそれぞれの国の「挨拶」の言葉、日本語では「いただきます」「ごちそうさま」など、ほかの国の言語には訳せないけど、単なる食前食後の挨拶でなく、食事を通して感謝の気持ちを込めた言葉の紹介がありました。どれも「相手を思う気持ち」が言外に含まれている言葉で、それぞれが復唱したり、綴りを教えたりの姿が見られました。
お互い馴染んできたところで、終了の時間となり、名残惜しく解散となりました。今回のイベントで、派遣に応募しよう!と思ってくれる生徒さんが少しでもいれば嬉しい、と赤羽さんご家族も支部のボランティアたちも思っています。
今年度の留学生が全員会うのは、コロナ禍のため、実は今回が初めて。生徒たちにとってはそれも嬉しかったようで、校舎を出たところで何枚も写真を撮ってはしゃぐ姿が見られました。コロナに対してはまだまだ油断はなりませんが、感染予防に注意しながら、対面で会う時間を少しでも長く、多くできるようにしたいと思いました。
支部へのお問合せ
(公財)AFS日本協会 長野南信支部
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