2022年5月20日(金)、栁澤 寿男(やなぎさわ としお)さん(バルカン室内管弦楽団音楽監督、コソボフィルハーモニー交響楽団首席指揮者)を講師にお迎えし、「バルカンから響け!歓喜の歌」と題して「AFS友の会ZOOMネットワーキング5月の集い」講演会が開かれました。
栁澤さんは、2005-2007年にマケドニア旧ユーゴスラヴィア国立歌劇場、2007年以降、コソボフィルハーモニー交響楽団首席指揮者を務める傍ら、民族紛争が続いた同地域の民族共栄を願い、2007年に敵対する民族の音楽家を束ねバルカン室内管弦楽団を創設されました。2009年にはコソボ北部ミトロヴィッツァでコソボ紛争後初めての混合民族音楽家の文化交流を実現。国連総会に付随するイベント「バルカンリーダーズサミット」での演奏をはじめ、国内でも被災地ユースオーケストラの指揮者を務めたり、音楽を通して平和を希求するシンボル的存在として国内外で注目されておられます。
栁澤寿男さんにご講演いただけることになったのは、AFS12期生として1965-66年にアメリカに留学した角崎悦子(つのざき えつこ)さんを通してです。角崎さんは幼少からヴァイオリンを学び、アジア防災研究所主任研究員として活躍する傍ら、ご夫君の外交官、角崎利夫さんの任地の先々、ロンドン、モスクワ、ジュネーブ、セルビアなどで音楽活動を続けていらっしゃいます。現在はセルビア日本音楽交流推進の会を主催しており、栁澤さんのバルカン室内管弦楽団とも一緒に演奏したり、ご夫婦で深く関わっておられます。
かつて、サラエボ冬季オリンピックの開催国であった、チトー大統領時代の旧ユーゴスラヴィア(バルカン半島にある)は他民族国家で、現在、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、コソボ、モンテネグロ、北マケドニアの7つの国に分かれています。南西部にはアルバニア共和国が隣接しています。
コソボ紛争は、1999年にコソボにあるプリシュティナのセルビア軍関係施設やセルビアの首都のベオグラードにあるセルビアの軍関係施設、国営放送等がNATOによる空爆を受けて、終止符が打たれました。紛争後のコソボは治安、医療、教育の面で大変で、生活が困難。2006年時点で、人口が約200万人、平均年齢が24歳位(推定)、平均寿命が50代~60代(推定)。1日の1/3は停電、断水があり、法律さえも整っていなかったそうです。
2007年のコソボフィルハーモニー交響楽団の演奏会のリハーサル休憩中に、親戚を1999年の爆撃(紛争中のNATOによる空爆だったが、誤爆もあったと言われている)で失った、音楽監督のバキ・アシャリさんは、戦争になったら、音楽会を止めて、銃を持って戦争に行きたいと言っていたが、演奏会でベートーヴェン交響曲第7番が終わった時に、涙ながらに飛んできて、音楽家は銃を持って戦争に行きたいと言ってはいけない、人に優しく生きていきたいと言ったという。音楽がすっと心に届いたと感じた瞬間だったそうです。バキさんと栁澤さんはその後、大親友になったとのことです。
紛争後は1つの楽団に1つの民族しかいられなくなってしまったが、栁澤さんは、年に一度、バルカン室内管弦楽団にマケドニア人、アルバニア人、セルビア人、ブルガリア人、ボスニア人、その他を入れて演奏会を開催しています。12年~13年位経って、音楽のクオリティーも高くなっているとの事。世界市民として共存共栄できるように希求していらっしゃいます。
角崎さんも、「理解し合って、音楽の力で心が通じる社会が早く実現出来る事を願っており、ずっと応援していきたい」とおっしゃっています。
栁澤さんと角崎さんの地道な音楽活動に大変感銘を受けました。栁澤さんによる追加のお話も伺いたいと願っています。今後も益々のご活躍をお祈りし、是非、バルカン室内管弦楽団のコンサートに伺いたいと思っています。
中山久子(AFS13期)
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