フィンランド大使館商務部商務官のLaura Kopilow(ラウラ・ コピロウ)さんのよる「フィンランドを知ろう」シリーズの第3回(11月13日)は、「ガイドブックに載っていないフィンランド~ラウラさんと一緒に旅をしよう」でした。
フィンランドは日本から9時間で行ける一番近いヨーロッパ。コロナ禍の前には、成田、関空、名古屋、札幌、福岡(夏の間だけ)の5つの空港から週に夏場は45便、冬場は28便も飛行機が飛んでいました。すごい便数です。フィンランドがそれだけ私たち日本人に人気があると言うことですし、同時に、ヘルシンキからパリ、ロンドンなどヨーロッパの主要都市にその日のうちに移動出来るというハブ空港としての魅力も大きいと言えます。空港での乗り換えがスムースに設計されているのも、さすがデザインの国と言えます。
ラウラさんがご提案のフィンランドの旅は、名所巡りとはまた違った、フィンランドのライフスタイルやフィンランドの暮らしを楽しむ、ゆったりとした旅です。今回は、首都ヘルシンキを中心にご案内くださいました。以下、その一部をご紹介いたします。
ラウラさんのプロフィールや講演の動画は、ページ下からご覧いただけます。
オススメの時期
首都のヘルシンキは南に位置しているが、北にはサンタクロースがいるラップランド、西にはムーミンのテーマパークがある。訪れる時期として一番のお勧めは6月から9月の夏の爽やかな時期だが、秋は紅葉、冬はお家時間の楽しみ、春は一斉に花が咲き乱れ、どのシーズンもそれぞれに特別な楽しみ方がある。オーロラのベストシーズンは9月。一日中日が沈まない夏の白夜と、逆に太陽が顔を出さない冬の極夜の対比はまさにドラマチック。行く前にチェックが必要なのはクリスマスの時期。ホテルやレストランや店が閉まってしまうので要注意。
食べ物
国民食とも言えるのが、ライ麦の皮にミルク粥を詰めて焼き、エッグバターをのせて食べるカレリアンピーラッカ。どこのパン屋にも売っているし、ホテルの朝ごはんにも必ず出て来る。フィンランド人にとって、日本のおにぎり的な感覚の食べ物。カルダモンとシナモンがたっぷり入ったシナモンロールも人気。コーヒーとの相性は抜群。因みに、フィンランド人はコーヒーの消費量が世界一。チーズと言えば、表面に焦げ目がついたレイパユースト。食感がまるでかまぼこのよう。
果物で代表的なのはベリーとりんご。ブルーベリーをはじめとして、ベリーは50種類以上もあり、森の恵みはみんなのもの、森にベリー摘みに出かけ、ヨーグルトと一緒に食べたり、パイを焼いたり。
パンの代表格はライ麦パン。焼いてパターをつけて食べるが、味が濃くてちょっと酸味があり、植物繊維をたくさん含んでいる。
朝ごはんは質素で、量も少なめ。一般的なのは、オートミールに代表されるお粥、バターを入れて食べると味がグンと引き立つ。バターを塗った薄いライ麦パンに、チーズやキュウリをのせて食べるのも定番。そして、いつでも欠かせないのがコーヒー。日本と同じように昼ごはんと夕食には魚料理を食べることが多い。
フィンランドの家庭料理と言えば、最初に思い浮かぶのがサーモンスープ。ディルをたくさん入れるのが特徴。そして、その他みんなが良く食べるのが、サーモンのオーブン焼き、白身魚のグリル、「マカロニラーティッコ」と呼ばれるマカロニグラタン、肉だんご、スパゲッティとミートソース、ラザニア、トルティーヤ、ホットサンドなど。
一般的に、フィンランドで理想的な食事は、半分が野菜、4分の1がチキンや豆、魚などのタンパク質、そして残りの4分の1が炭水化物、じゃがいもやパスタ、お米。
買い物
フィンランドのスーパーマーケットはなかなか楽しい。パッケージデザインが優れた可愛いデザインのものが多い。例えば、老舗菓子メーカーのファッツェル社のお菓子。どこのスーパーでも買えるし、値段も手頃。棚の隣に並んでいるマリメッコのナプキンと一緒に買えば、お土産にも最適。
どこのスーパーにも、ペットボトルのリサイクルスタンドがあり、お金が戻ってくる。小さいので20セント、大きいので40セント。小さいボトルを5個も持って行けば1ユーロになるのだから、ペットボトルは誰も捨てない。
レジ袋は有料。エコバッグは環境に相応しくない素材もあるので要注意。
ショッビングの有名メーカーは、マリメッコ、テキスタイルのカウニステ、リネンやウールのラプアンカンクリ、シラカバ合成小物のロヴィ、陶器やガラスのアラビア、イッタラ、タオル、キッチンミトンやシーツのフィンレイソン、インテリアのペンティックなどです。マリメッコのアウトレットは日本人観光客にも大人気。
交通機関
ヘルシンキの公共交通機関で一番便利なのがトラム。ゆっくり景色が楽しめるし、いろんなコースがあって、ループ状に回っているラインもあります。地下鉄は一本だけ。最近の人気はキックバイク、アプリを買って10分200円程度、どこでもいつでも乗り捨て可能な便利さが受けている。自転車もアプリがあって、クレジットカードでの支払いもOK。
散歩コース
散歩コースのオススメは、セウラサーリ野外博物館。有料と無料の地域があり、ヘルシンキ郊外に位置しているが、バスに乗れば簡単に行ける。歩くと40分くらい。
トーロ湾一周も、一押しの散歩コース。一周2キロ。信号がなく、アップダウンのある道で、散歩にはぴったり。
朝のランニングには港の海岸沿いをお勧め。特に、白夜の時に訪れると、一晩中、いつでも好きな時に走れる。
ヘルシンキ中心部の街歩きは、建物を見て歩くだけで発見がいっぱい。19C末から20C初のユーゲント・シュティール様式にフィンランドらしさが加わった建物や、1917年の独立前後のナショナル・ロマンティシズムの影響を受けた建物もいろんなところに残っている。個性的な窓、ファサードのディテールや屋根の下の可愛い動物の置物など、細部を観察すると面白い。
疲れたら、新しく出来たヘルシンキの中央駅に近いOodi(オーディ ヘルシンキ中央図書館)で一休み。建物も斬新な構造。
ヘルシンキはアートの宝箱でもある。国立美術館、市立、私立がそれぞれ徒歩圏内にあり、美術館・博物館巡りだけでも何日も楽しめる。
もちろん、森の散策もオススメ。フィンランドの自然享受権は、住民だけでなく旅行者にも与えられていて、誰でも自由に森や沼地を無料で楽しむことが出来る。特別な許可なしに、そこに生えているベリーやキノコを採集することが出来るのも大きな魅力。
サウナ
フィンランドと言えばサウナ。日本語になった唯一のフィンランド語。
フィンランドの人口550万人に対してサウナは300万もあり、人々の生活に密接している。元祖サウナは温度も65度くらいで低目で、中は暗い。温度調整が可能なのが便利。「ロウリュ」と言って、水をストーブの石にかけて調整する。日本の温泉と同じで、入っている時間も温度もそれぞれ好きなように。しかし、日本のサウナ施設にある水風呂はない。サウナは夏の小屋にもあって、湖の傍に建てられていることが多いので、みんな暑くなれば湖に飛び込んで身体を冷やす。
もちろん、昔からの公共のサウナもあるし、最近では、スタイリッシュでモダンな建築のサウナ・プールも出来ている。数年前にオープンしたAllas(アッラス)Sea Poolは、マーケット広場の近くにあって、港の眺めが最高。
滞在予定のホテルにサウナがあるかどうかは、事前にチェックした方が良い。
ヘルシンキのホテルは、20世紀を代表するフィンランドの建築家アルヴァ・アアルトの家具やデザインに特化しているところ、五つ星、屋上にプールがあるところ、映画の「雪の華」ロケで有名なところなど色々あるし、短期でもステイ出来るアパートもオススメ。
因みに、フィンランドは水道水が美味しいので、ペットボトルの必要はない。
カフェ、レストラン
カフェのオススメは、老舗菓子メーカー、ファッツェル本店のカフェや市場の中にあるカフェ。
地元の人が好きな老舗Ekberg(エクベリ)は庶民的な資生堂パーラーのような昔からある伝統的なカフェ。
レストランで最近有名なのが廃棄物ゼロを実践しているNolla(ノッラ)。その他、ORA(オラ)も評判が良い。
日本の中のフィンランド
埼玉県の飯能にはムーミンバレーパークがオープンしているし、フィンランドの大手ブランドのショップも東京にはあり、鎌倉には美味しいフィンランドのパン屋もある。フィンランドを訪れてもらうのがベストだが、このコロナ禍の中でも、日本各地にあるフィンランドを楽しんで欲しい。
以上のようなお話がラウラさんからあった後に、質疑応答として、参加者からの質問がありました。フリーマーケットのこと、カフェのこと、フィンランドに持っていくお土産、オーロラ、サンタクロース、クラシック音楽など、幅広い分野の質問があリました。ラウラさんのお話やお答えは自然体で等身大。ご自分が実際に体験したこと、美味しいと思ったこと、好きなことなど、ご自分の目線でお話になるので、それ自体がいかにもフィンランドらしいと感じました。
私も仕事柄フィンランドへ30年近くも通い続けていますが、どこに行っても、日本からの訪問客を多く見かけます。団体で来る人よりも個人で旅行している人が多いように感じています。そして、半分以上は女性のような気もします。日本からのお客さまをお連れすると、「ここにまだ1日しかいないのに、日本のあの忙しさは何だったんだろうと感じます。」と感想を述べられる方も多々いらっしゃいます。
私自身も、フィンランドに行くと、首都ヘルシンキにいても、風の動き、日の光の揺らぎ、海からの匂いを感じ、時間がいつもよりゆったり流れるのを楽しむ余裕が出てきます。夏の午後、湖の桟橋に座って、脚をブラブラさせながら、水面に映る雲の動きや白樺の葉っぱが風にそよぐのをぼんやり眺めていると、まるで自分が10歳の頃に戻ったような気になります。それがフィンランドの魅力です。
ラウラさんのお話を聞いて、私も再びフィンランドに行きたくなりました。コロナが一日も早く収束しますように。
迫村裕子 (13期)
Laura Kopilow(ラウラ・コピロウ)さんのプロフィール:
2006年、函館で高校生活を体験したフィンランドからのAFS留学生。
帰国後、ヘルシンキ大学在学中に早稲田大学に留学。ヘルシンキ大学を卒業後、再び来日し、国費留学生がとして北海道大学大学院法学研究科に入学し、修了。現職に至ります。
日本テレビ「世界一受けたい授業」などのテレビ出演やその他メディアのインタビュー、講演などでも活躍中。
AFS友の会では、講演会やチャリティコンサート、ボランティア活動などのイベントを行っています。
[email protected]にご氏名、AFSとの関係をご連絡ください。
AFS友の会のイベント情報を、メールでお知らせします。
この記事のカテゴリー: AFS友の会レポート
この記事のタグ : AFS友の会