日本に暮らす「外国人」の増加、在留資格の特定技能の創設、SDGsなど多様性尊重の気運の高まりなどにより、日本国内においても異文化理解や多文化共生という言葉を耳にすることが増えてきました。長年、留学プログラムを通じて異文化理解の機会を提供してきたAFSは、留学以外の方法でも、これらについて学んだり考えたりする機会をもっと広げていきたいと考え、中高生向けの多文化共生セミナーを企画しました。

第1回目となる今回は10月25日(日)、オンラインで開催しました。テーマは「マイクロアグレッション」。マイクロアグレッションとは、自覚なき差別とも呼ばれ、相手を差別したり傷つけたりする悪意はないけれど、相手の心に影を落としてしまう言動のことです。今回セミナーに参加した約40名のうち6割が「初めてこの言葉を知った」と回答しましたが、実はこの言葉は比較的新しく浸透してきた言葉で、オックスフォード英語辞典には2015年にようやく追加されたそうです。
この事象のポイントは「悪気はなかった」「意図していなかった」「褒めているつもり」のことも該当するということ。それゆえに、日常的に誰にでも起こりうるということです。

実際にはどのようなことなのか?より具体的なイメージをもってもらうために、ゲストに日本に長く滞在されているマーシャル・アダムスさん(元AFS国際本部職員)をお招きし、具体的なエピソードをいくつかお話しいただきました。

・「道を渡る」
向こう側からやってきた人が私に気付いて、すれ違う前に道を渡ってしまうことがあります。何か気に障ったら嫌だな、面倒なことが起きたら嫌だな、という気持ちなのでしょうか。似たケースとして、電車で隣の席に座るのを避けられることもあります。

・「お箸」
よくお上手ですねと言われますが、アメリカでもアジア料理を食べるのにお箸を使う機会は多いんですよ。それに、子どもにもできることをあまりベタベタ褒められるのは、そんなに気持ちのいいものではありません。

・「日本語お上手!」
お箸の例とよく似ていますが、日本語を話せることを期待されていないように感じます。また、もしかしたら私は「外国人」に見えるだけで、そうではないかもしれませんよ?!そう(日本生まれ日本育ち、国籍が日本、日本語以外の言語ができないなど)だったら言われたくないですね。

・「外人が~」
例えば海外旅行などに行った人がお土産話の中で「外人にこう言われて~」のように話すのを耳にしますが、国外に出たら外国人なのは自分ですよね。このような言い方には、自国中心の意識、日本人とそれ以外の人たちという世界観を感じます。

具体的なエピソードからマイクロアグレッションとは何か?をイメージできたところで、ブレイクアウトルームで小部屋に分かれ、話を聞いてどう思ったかや、どうしたらマイクロアグレッションを避けられると思うかについて、チャットも使いながら、参加者同士で意見を出し合いました。
自身が実際にマイクロアグレッションを経験したことがあるという参加者は「知らないのだからしょうがないと思っていたけれど、もっと多くの人が視野を広くもって色んなことを知っていったら変わるかもしれない」とコメントしてくれました。「そのためにも色んなバックグラウンドをもつ人々ともっと交流したり、インターネットを活用して世界の人とコミュニケーションしてみるといいのでは」、など様々な意見がだされました。

参加者からは「どのような言葉がなぜ嫌だったのかということが聞けて良かった」という感想が聞かれた一方で、「こういうことを考えていたら何もできないのでは、と思ってしまう。余計に混乱した」というコメントもありました。実際、マーシャルさんが例にあげてくださったことも、皆が同じように感じるわけではありませんし、このケースの正しい振舞いはこれです、といった唯一の答えはありません。ある参加者が「私たちもそうであるように「外国人」という一括りの人たちではなく、一人ひとり個性があり、違うバックグラウンドを持つ一個人として、尊敬の念を持っていきたい」と感想を寄せてくれたとおり、一括りで考えないというのが、まずは大事な姿勢かもしれません。

今回のセミナーが多文化共生について考えるきっかけになっていれば嬉しいです。
また、今回テーマに取り上げた「マイクロアグレッション」を含むオンラインの異文化学習プログラムもありますので、興味のある方はぜひ参加を検討してみてください。

▼AFS Global You Adventurer(対象:14~17歳)


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