AFS友の会講演 「地球聖地」

講師:写真家・稲田 美織(いなた みおり)さん

9月7日(土)午後、AFS友の会ネットワーキングの集いがAFS日本協会事務所会議室で開かれました。


講師の写真家・稲田美織さんは、17年間住んでいたニューヨークで、2001年9月11日に自宅から同時多発テロを目撃。目の前で3000人もの人の生命がビルと共に跡形もなく消えてしまう経験をしました。その3か月前にはお母様の急死もあり、30代で沢山の死を経験し、1年間はカメラにも触れられず、グラウンド・ゼロにも近寄れませんでした。稲田さんにとって、あこがれと誇りであった、多様性の最先端のニューヨークであのようなテロが起きたことに絶望してしまったのです。
そんな時に、書店でネイティブアメリカンの写真集に出会い、アメリカが好きだと思える写真を見て、元気を得て、カメラを持って、ネイティブアメリカン居留地のあるアリゾナ、ニューメキシコなど4州を回り、再度、写真を撮り始めました。ネイティブアメリカンの人達は、自然に対して祈りをささげていて、自然に生かされていることが素晴らしいと感じたのだそうです。

その後も取りつかれたように、パレスチナ、イスラエル、ウクライナ正教、ギリシャ、フランスのモンサンミッシェル、ルルドの泉、中国の黄河源流域、チベット、アンコールワット、メキシコ、アラブ首長国連邦などを回りました。自分がそこに立って感じることを大切に写真を撮りました。神様が人類をどこに導こうとされているのかを知り、調和の鍵を見つけるために世界中の聖地巡礼の旅を開始したのです。

その世界の聖地の写真展が銀座で開催された時、伊勢神宮でその年から8年かけて式年遷宮があるので写真を撮るように勧められ、伊勢神宮に案内されました。神域に足を一歩踏み入れた瞬間、涙が止まらなかったそうです。大切なものに出逢えたと直感し、その後完全英語版の写真集「Ise Jingu and the Origins of Japan」が出版されました。

引き続き、導かれて出羽三山の撮影を依頼され、写真集「日月巡礼 出羽三山」が出版されました。
出羽三山とは峰続きの羽黒山、月山、湯殿山の総称。羽黒修験道では、羽黒山は現世、月山は死後の世界、湯殿山は来世と言われ、山伏の方々は現世の自分を葬り、白装束を付けて山で無心に修行し、天地のエネルギーを頂き、擬死再生によって、新しい自分に生まれ変わるそうです。

稲田さんが撮る写真は、堂々としていて、力強く、自然の息吹が感じられ、荘厳で、神秘的で美しく、そして優しさもあり、心の底から感動します。そして何度も繰り返し、見入ってしまい、心癒されます。
稲田さんは、出羽三山撮影時、天気が悪い時でも写真を撮るために入り、道なき道を歩き、祈りの地を撮影したそうです。夜、七色の光が二重に輝く神秘の月が月山の頂上に出現した時も、周りの皆さんが怖がる中、ひとりで行って、撮影を行いました。
別の日には、月山の山頂で出現したブロッケン現象を撮りました。その虹の中に浮かぶ影は自分の影なのだそうです。稲田さんは、自分の人生と同じで、自分のものは自分にしか見えないとおっしゃっています。

出羽三山の旅はちょうどJR東日本のコマーシャルで身近になっていますが、稲田さんが私達でも行けるお勧めのコースを教えてくださいました。
月山は、8合目までバスで行けて、後は平らな所を歩くだけなので、7月初めから終わりまで、高山植物、水芭蕉、エーデルワイズがあちこちに咲いていて、お勧めだとのこと。10月10日頃の美しい紅葉は志津温泉からペアリフトで行けるのでこれもお勧めとのこと。羽黒山の国宝五重塔は、今年11月30日までは一般公開しており、中に入れるそうです。
尚、来年は東京でも出羽三山の写真展が開催されるようです。これも大変楽しみです。
(AFS13期 中山久子)


稲田美織さんは、撮りためた聖地の写真を日本、ニューヨークをはじめ、モナコ、イスラエル、ヨーロッパなどの美術館、ギャラリーで展示、世界中で講演会や様々な媒体に出演、出版などで活躍。2015年神道文化功労賞を受賞。2016年伊勢志摩サミットでは英語版「Ise Jingu and the Origins of Japan」がG7の首脳陣に公式に渡されました。
著書に「聖地へ 神々の大地に祈る」(小学館)「水と森の聖地、伊勢神宮」(小学館)「伊勢神宮、水のいのち、稲のいのち、木のいのち」(亜紀書房)「奇跡に出逢える世界の聖地」(小学館)「日月巡礼 出羽三山」(小学館)などがある他、新聞、テレビ、雑誌など多くの媒体でも紹介されています。


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