被爆者からのメッセージ「若者の国際交流を通じて平和を」
10月27日支部恒例の広島平和学習を行いました。
交換留学生7名と引率2名(アメリカとフィリピンのリターニー)は被爆者で壁画七宝作家の田中稔子(たなかとしこ)さんが運営する「PEACE交流スペース」を訪れ、約3時間にわたって田中さんから英語で被爆証言を聞き、活発な意見交換や田中さんの作品鑑賞を行いました。
またその様子をNHK報道局(東京)と共同通信社(広島支局)が取材を行いました。
「原爆によって殺されかけたのに、どうして相手の国を許し、証言活動をする気持ちになれたのですか?」
「平和な世界を作るために、私のような普通のティーネージャーは一体何ができるのでしょうか?」
留学生たちは時には目頭を押さえながら証言に熱心に耳を傾け、田中さんに問いかけました。
田中さんは穏やかに、憎しみは憎しみの連鎖しか生み出さない事、核兵器のような悲惨な武器を廃絶するには、まず将来を担う若い世代が核兵器の現状を知り、被爆証言を通して被害を受けるのは普通の市民であることを知ってほしいという事、そして若者ができる大切な事は国際交流を通して友達を作る事だと語りました。
なぜなら外国に友達がいれば、つまり相手の国が単なる覇権争いの相手ではなく人間として顔の見える相手であれば、その国と戦争したいとは願わなくなるからです。
「核抑止力ではなく若者の国際交流を通じた戦争抑止を」
そう願う田中さんのメッセージに生徒たちは強く心動かされた様子でした。
メディアによる取材は生徒のスペース到着から始まり、生徒たちが証言を聞き終えた後も個別取材が続きました。
テレビカメラが回り記者が見守るという慣れない雰囲気に緊張しながらも、生徒たちは落ち着いて自分の意見を述べたリ、世界平和のために自分に何ができるかを考えたい、と強い意志を持って答える様子がとても印象的でした。
兵庫県支部 平和学習担当
異文化理解学習認定トレーナー(NQT)
田代 礼子
田中稔子さんとPEACE交流スペースについて
田中さんは6歳の時広島で被爆して生死の境をさまよい、その後50年以上にわたって平和をテーマにした壁画七宝作品を作り続けています。
2008年からは世界航海をしながら被爆証言を始め、2011年3月にはニューヨーク国連本部で潘基文事務総長とも面会しました。
田中さんは特に若い世代に核の脅威を知ってもらいたいと、2009年から毎年米国ニューヨーク周辺の学校で主に高校生を対象に被爆証言を行っています。
また2017年ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の活動にも参加し、サーロー節子さんやクリフトン・トルーマンさん(原爆投下を命じたトルーマン米大統領の孫)とも親しく交流があります。
「PEACE交流スペース」は2016年に田中さんが自宅の一部を改築、一般に無料開放しているスペースで、アート作品を鑑賞しながら被爆証言を聞き、交流するための場です。
これまでのべ3052人がスペースを訪れ(2018年10月末現在)、その内146人が外国からの訪問者です。
AFS兵庫県支部の留学生がこのスペースで田中さんの証言を聞くのは今回で3度目になります。
兵庫県支部の平和学習について
支部では毎年広島訪問の前に事前学習会を行い、世界唯一の戦争被爆国である日本に留学している生徒たちが被爆地を訪れることの意味を皆で考えます。
学習会の冒頭には現在世界に存在する核兵器の数を感覚的に理解する「BB弾デモ」を行います。これは国連軍縮部(UNODA)が推奨し,アメリカの多くの学校教育の場でも導入されている効果的かつ参加者主体的な軍縮教育法です。
生徒はまず目を閉じてBB弾1個が缶に落ちる音を「第2次世界大戦中に用いられた(2発の原子爆弾を含む)すべての兵器の威力の音」として聞きます。その後再び目を閉じて、2発目の音、「現在世界に存在すると言われる約15,000発の核兵器の威力の音」として2225個のBB弾が缶に落ちる音に耳を澄まします。
2225個のBB弾の鳴りやまない凄まじい音は、核の脅威が決して自分とは無縁でも過去のものではなく、地球に住む私たちが今日共有している差し迫った脅威であることを強く印象付けます。同時に被爆地に行って学ぶということは、平和な未来を作り出すきっかけになる事を知らせます。
支部へのお問合せ
(公財)AFS日本協会 兵庫県支部
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