AFSでは、70年以上実施してきた高校生の交換留学事業から培ったノウハウを活かし、国際理解の推進やグローバル人材を育成する講座を実施しています。この度は、兵庫県神戸市の灘高等学校からご依頼を頂き、200名以上の生徒の方々を対象に「世界と生きるためのTips 〜一人称で見る世界。南米からのメッセージ〜」と題して弊協会理事の小林千晃(AFSの留学プログラムでチリに留学)が講座を行いました。
今回の講座では、日本ではあまり馴染みのない中南米を題材に中南米と日本、中南米と兵庫県の深いつながりを紹介するとともに、世界30か国以上から多くの移民を受け入れ、190万人の日系人が暮らすブラジルを題材に年々国際化する日本人にとっても参考になるブラジルの国際化の過程や、ブラジル人と日本人の考え方の違いについて紹介しました。
【講演要旨】
伝統的な寺院と富士山が映え、桜が美しく咲き誇る国、NIPPON。
世界中の多くの人がニッポンの好意的なイメージを抱いている一方で、つい最近、話題になったスポーツ選手の国籍について、フェイク・ニュースの記事など、日本国内よりも世界で大きく取り上げられているニッポンの話題がたくさんあります。
インターネットが普及し、「日本人の考え方」が以前より格段に早く・広く世界中に拡散してしまう現代では、世界中の人々が、私たち自身が感じているよりももっと敏感に「日本人の考え方」に注目しているのです。日本の外から眺めると違和感を持ってしまうような、日本人の「常識」や知らず知らずのうちに持っている「偏見」があることを、皆さんはご存知でしょうか。
私が、こうして「世界から見た日本」や「日本からは知ることの出来なかった世界」を感じることが出来たのは、世界を自分自身の目で、「一人称」の視点から、世界を見て・触れて・感じてきたからだと言えます。その最初の大きな転機となったのが、高校時代の留学経験でした。
チリでの留学生活の中で、私は将来の教訓ともなる「失敗」の経験を重ね、そして「日本の常識」が「世界の常識」ではないことを痛感しました。
「貧富の差をどう考えるか」「開発と自然保護、どちらがより大切なのか」
日本では触れたことのなかったこれらの「世界共通の課題」に、チリに留学したことで向き合うことができ、それが今の自分に繋がる大きな経験となっています。
その後、仕事を通じてブラジルに滞在し、この国で、世界でも先進的な「外国人・異文化との融合、そして同化」のプロセスを目の当たりにしたのです。
この国は、移民の受入れによってハイ・スピードで人口拡大・経済成長を果たし、今や世界第8位の経済大国になっています。そして、何よりもこの国の原動力となっているのが、外国人を受入れ、共に生きてきた、人種や文化の「多様性」なのです。
私たちが暮らす日本も、2020年には外国人観光客数4,000万人を目指しており、海外からの留学生や技術研修生の数もどんどん増加しています。少子化や人口減少が叫ばれている中、私たちの生活は、すでに外国人移民の存在なしには、成り立たなくなっているのかもしれません。
そうであれば、今こそ、日本はこの移民大国であり移民によって急成長を果たしたブラジルから、学ぶべきことがたくさんあるはずだ、ということを、皆さんにお伝えしたいと思います。
通信技術や輸送技術の進展により、現代の高校生にとって「海外」はさほど高い壁ではなくなってきています。
たとえ日本国内にいても「国際化」から免れない、これからの世界を生きる高校生の皆さんに、「自分自身の目=一人称」で様々な視点を学び取ってほしい。
この講座を受けた灘高生の皆さんにとって、この日がその第一歩になればと願っています。
AFS日本協会では、国内の学校現場における国際理解教育プログラムの提供を行っています。
ご関心のある学校・先生方は、ぜひAFS日本協会([email protected])までご連絡ください。
この記事のタグ : 出前授業