<研修の概要>

2017年2月1日~5日の5日間インドのデリーで開催されたICL(Intercultural Learning=異文化学習)研修に参加した。これはAFS国際本部が全世界で展開しているICL全4レベルの内レベル1以上の国内研修を担うNQT(National Qualified Trainer=国内認定トレーナー)を育成するための研修で,今回は日本を含むアジア5か国から12名が研修を受けた。

研修の内容は大きく7つの分野に分かれており,最初の3日間で全分野の内容ならびにグループ・ダイナミックス(Group Dynamics =集団力学) ,LSO(Learning Session Outline=学習セッションの概要)等の様々な研修スキルを学んだ。

最終日は参加者を5つのグループに分け,それぞれの担当分野について45分間の模擬セッションを行った。参加者は帰国後もオンライン学習を継続して審査を受け,基準を達成すれば正式にNQTとして認定される。

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トレーナーの国籍も多様(アメリカ,ブラジル,インド)

<日本と異なる研修スタイル:とにかく活発かつハード>

まず驚いたのは,その研修スタイルの違いである。日本でお馴染みの先生が前に立って生徒は資料やパワーポイントを見ながらひたすら話を聞くという場面はほぼ皆無であった。

それぞれのセッション(90分)はまず「エネジャイザー」と呼ばれる短い活動で心身をほぐすことから始まる。滑稽な歌に合わせた踊りあり,小ゲームあり,笑いと活力がみなぎるのを感じる。セッション開始時には紙に書かれた達成目標が導入され,それに沿った活動をまず経験する。

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エネジャイザーも大切な要素

その後,参加者は経験から感じたこと,発見した事実を話し合い,それを普遍的な理論に落とし込んでいく。セッションには社会心理学等に基づく多くの理論やモデルが組み込まれており,トレーナーは「先生」ではなく「ファシリテーター」として学びの水先案内人を務める。セッションの最後には必ず「振り返り」の時間が設けられ,学んだこと,当初掲げられた目標を達成できたかどうかを話し合う。

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トレーナーは「先生」ではなく「ファシリテーター」

日本をはじめとしたアジアの多くの国で見られる「理論」をまず詰め込むやり方とは真逆のやり方で,眠気を感じるどころかいつの間に他国の参加者と競って発言をしている自分に気づいた。

研修のスケジュールは非常にハードで連日朝9時から20時まで食事とわずかな休憩をはさんで緻密に組まれており,模擬セッションの前夜に至っては深夜過ぎまで準備に取り組むなど多忙を極めたが,非常に充実していてあっという間に5日間が過ぎた。

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活動から経験したことを学びにつなげていく

<学びを今後のAFS活動に生かす>

研修内容はどれも今後の活動に役立ちそうなものばかりだったが,中でも私が特に興味を持った分野3(文化的価値観と次元)について述べてみたいと思う。

この分野では参加者はトレーナーが読み上げる文章(例えば「不確実なことは人生において脅威である」「貯蓄よりも消費することを好む」)についてどれくらい当てはまるか,床に貼られたテープ軸(0~100)の上に立つことにより,まず自分自身や属する文化に対する認識を持つ。その後,ホフステードの「文化次元論」が導入される。

「文化次元論」によると,文化は6つの次元によってその全体的な傾向を知ることができる。特に「不確実性を避ける度合い」について日本は研修参加国の中で最も高い92で,最も低いフィリピンは27であった。この傾向は模擬セッションの準備でも顕著に見られた。日本の参加者は他国の参加者に比べて準備時間の短さや指示の曖昧さに不安を抱える度合いが顕著に高く,興味深かった。

この様な科学的研究に基づいた文化傾向をAFSのボランティアやスタッフ全員で共有することによって,生徒やファミリーや学校の橋渡し役をする上でより効果的で客観的に関われるのではと感じた。

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要点のまとめは紙に手書きが基本

<今後に向けて>

今回の研修は非常に内容が濃く,いまだに未消化の状態ながら自分の中で確実に「異文化理解の種」が芽生えている感覚を持っている。他方で研修内容を日本で用いる際には若干の調整が必要かも知れない,また概念的な話が多いので,それらをいかに具体的な活動にリンクさせるかという工夫も必要だと思う。これからじっくりと消化しながら今後のAFS活動の貢献につなげていきたい。

最後になったが私のような若輩者を研修に送り出してくれたAFS日本協会に心から感謝したい。

-田代礼子(AFS兵庫県支部)

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他国の参加者との交流も大きな収穫 (香港とインドの参加者とホテル界隈を散歩)
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異文化理解の学びはこれからも続く

▼ボランティア・職員の異文化学習


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