AFSでは世界中で4万人のボランティアが活動していますが、国を越えて活動内容を共有したり、より良い活動を目指して意見交換を行うために、ボランティア・エクスチェンジを行うことがあります。
4月11日、日本から8名の代表ボランティアが渡米し、それぞれわかれて各地の支部を訪問した後、カンザスシティに集まり、アメリカの全国ボランティア大会に参加しました。 約1週間の滞在でしたが、同じAFSボランティアとして共感したり、お互いの活動から学んだりと有意義な機会となったことと思います。
以下に、滞在レポートをご紹介します。
ホストファミリーについて
まず、ここ数年のアメリカは、派遣生の出発遅延が起きていることより、ファミリーファインディング(以下FF)に苦労していると想定していたが、それは誤りだった。
当初より複数家族配属が増えてきている日本から見ると、ほぼ年間1ファミリーで通せているアメリカの方がFFに関しては、日本より良い状況と言える。出発遅延の主たる理由は、ホストスクールファインディングに起因していることが分かった。(複数家族配属=事前にホストファミリーの途中移動が予定されている配属。)
私が滞在したワシントンDC(キャピトル支部)は約50名の留学生を抱える大きな支部であり、その中で日本人留学生は1名のみ。留学生の配属は本部よりアメリカの人口における民族の比率と同じように、ヨーロッパ系xx%、アジア系xx%というような配分で配属されてくる。
ファミリーへの配属について驚くのは、5枚くらいの生徒書類をホストファミリーに提示し、その中から選んでもらうというシステムになっていることだ。これは既に10年以上続いている方式とのことだった。
名前と写真は除かれているが、それ以外の情報を読んで、ホストファミリーは留学生を選ぶことができる。私がお会いした元ホストファミリーは、日本人男子生徒を選んだが、その理由としては彼に小さな妹がいたため、幼いホストシスター達との関係をうまく結べると想定して選んだそうだ。そして、それは想定通りで、今でも良い関係が続いているとのことだった。
何らかの制約があり、最後まで配属が決まらない留学生に関しては、経験のあるホストファミリーや支部ボランティアにお願いをしており、この部分は日本と同じであった。
また、ホストファミリーは留学生の交通手段の確保について苦労していることが挙げられた。
アメリカはどこに行くにも基本的に歩いて移動することは少なく、朝はスクールバスで学校に行ったとしても、クラブ等で遅くなる場合は、スクールバスの時間に間に合わず、別途のお迎えが必要になる。ホストシスター・ブラザーと違う学校になる場合は、送迎だけで何回も行うことになる。あるホストファミリーから聞いたのは、留学生本人がかなりの距離を歩いて帰ることを主張し、実行していたが、安全性の面でホストファミリーにとって心配な部分と、実際にスケジュール的に無理があることのはざ間で、気持ち的にかなりの葛藤があったと言っていた。
何度もホストファミリーをしているご家庭では、世界各地にいる元留学生を訪ねる旅行を楽しんでいる方も多かった。この点も、日本のホストファミリーと一緒で、共通点と感じた。
日本人留学生をホストしたいくつかのご家庭では、私が日本からのボランティアということで非常に親近感を示してくれ、ご自分の経験を様々お話しいただけたのは、とても嬉しい体験だった。
ボランティアについて
今回一番の驚きだったのは、アメリカのボランティアの在り方であった。
昨年行ったアメリカからのボランティアエクスチェンジのメンバー、日本で言えば評議員や理事のメンバー、次回のボランティア大会の開催場所等、全て積極的な立候補があり、ボランティアからの投票で決定をする。投票権はアメリカ全国の80チームの代表にそれぞれ一票がある。(チームの中には複数支部がある所と、1支部のみの所がある)
立候補の際には、それぞれのアピールポイントが添えられる。私たちが目にした事象においては何事にも、ボランティアから主体的にかかわる姿勢があり、事務所からの働きかけによって進むことが多い日本の現状とは、そもそもの前提に大きな違いがあると感じた。
おもしろいとおもったのは、ボランティアのリコグニションコミッティである。このコミッティでは、ガラッティ賞を始め、毎年全国ボランティア大会においていくつかの表彰をしている。これは、ボランティアの貢献を点数化しているとの事だったが、日本においても数年前に導入が検討されたが、見送られた経緯がある。
また、海外のシャペロン(留学生の引率)は貢献に対する報奨のひとつであり、同じく貢献が点数化されて、シャペロンができる権利が上位ボランティアに与えられる。これは日本でもすぐに導入ができるシステムであると思うので、実現化を強く勧めたい。
ボランティア大会終了後、最後の日に今後のためのディスカッションをした。この中で、「日本は最も厳しい配属制限のある国である」ということをアメリカ側から言われた。
確かに日本においては、「留学生」というと、日本語を熱心に習得し、積極的に友人を作り、なんでも興味をもって取り組むという、とても優秀な生徒像を求められる傾向にあり、ホストファミリーの期待度が高い。
そのため様々な制約がつくのだと想像に難くないが、アメリカ側のボランティアからは「私たちはどのような背景があっても、できるだけ生徒にAFS体験の機会を提供したいと思って活動しているのに、日本がそれでは不公平ではないか」と言われ衝撃を受けた。
日本からの派遣がそのような満点の生徒かどうかを考えても分かると思うが、実際にそのような生徒は現実的でないので、ホストファミリーの期待をどう下げるか、また支部ボランティアの意識をどのように変えていくかは今後の課題である。
ホストスクールについて
今回3つのホストスクールを見学した。それぞれ生徒数においての規模が違うのは理解できるのだが、日本で複数のAFSホストスクールを訪問することもあるが、それ程の個性の違いを感じることはないなか、かなりの個性の違いを感じとても興味深い体験であった。
入学に関しては全て抽選であり、入学試験はない。また、6・3・3制の日本と違い、学校によって通える学年が違う。
3つの学校全て、授業は少人数(多くて20人弱)、また机上で知識を覚えるというよりは、体験を通じて何かを身につける授業が多いと感じた。
■Gaithersburg High School
1つ目のホストスクールは、2400人の生徒のいる、巨大な公立高校であった。ワシントンDC周辺という事で、生徒の国籍の多様性もあり、インターナショナルな雰囲気のある学校である。
ヨーロッパとアフリカからAFS生を2名受け入れてくれていた。保健室には医師が常駐しており、生徒にとっては手軽に診てもらう事ができるメリットもある。また、職業訓練のようなプログラムもあり、当時は保育園生がきていて、一緒に遊ぶ姿もあった。
生物の授業では、後日動物園に行って研究対象をみつけるという話もあった。
■Washington Latin Public Charter School
二つ目のホストスクールは、600人規模の小さなチャータードスクールである。チャータードスクールというのは、公立ではあるが、運営は民間が行っており「ハイブリッド」という表現をしていた。
日本人のAFSが1人通っている。雰囲気も温かく、それぞれがなじみのある様子が、留学生にとっては居心地の良い場を提供してくれている。
まだ卒業生を4回出しているだけの新しい学校のため、体育館などを建設中の部分もあった。
校長先生は自分もAFSに受かっていたが、ホストファミリーが見つからないということで、海外に行くことはできなかったというエピソードを話してくれ、AFSに対しては好意的であった。
■James Hubert Blake High School
三つ目のホストスクールは、規模的にちょうど上記の間の1500人であった。ここも公立高校であるが、かなり多様なプログラムがあり、充実している。
私が見学したものでは、校内番組を作る本格的なBroadcastのクラスや、スペイン語だけで教えられるスペイン語、デジタルアート、ピアノ、太鼓、ヨガ等、かなり多彩な選択科目を持ち、私に話をしてくれる教師陣はいずれも専門知識があり、教えることに情熱的で、説明が止まらないという様子であった。またこの学校も就職のための職業訓練のクラスもあり、美容師のクラス等もあるとの事だった。
最後になりますが、アメリカにおいては非常に歓待いただき、AFSボランティアの底力を見せつけられた思いです。これをただ「楽しかった」で終わらせるのではなく、どのように形のある成果に結び付けて行くかは、参加者の今後の課題であると認識しています。
機会を提供いただいた皆様に感謝いたします。
東京多摩支部 形山鮎子
この記事のカテゴリー: AFS活動レポート ボランティア体験談