AFSは高校生を対象としたプログラムを行ってきましたが、今年、(公財)かめのり財団主催で短期の中学生交流プログラムを実施しました。

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このプログラムは日本からの派遣と日本への受入の双方向で実施されましたが、まずは受入プログラムとして、10月4日~13日の10日間、タイの中学生9名+引率教師1名が来日し、「被災地学習」のテーマに沿って、福島県で視察や現地の高校生との交流会を行いました。

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会津学鳳中学校での交流会。東日本大震災復興ソング「花は咲く」を合唱
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南相馬市津波被災地訪問・伝承鎮魂記念館訪問
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県立福島高校スーパーサイエンス部での交流会。放射線関連研究発表

続いて10月31日~11月8日の9日間、日本の中学生10名がタイに渡りました。派遣プログラムの詳細を、引率者からのレポートでご紹介します。


派遣プログラム

1日目:10月31日(土)
羽田空港 結団式:

派遣生は期待と不安が入り混じった表情で「タイで友達を100人作りたい」「大震災から11年経ったプーケットの現状をこの目で見て、復興の様子を学びたい」など一人ひとり決意を述べ、かめのり財団理事からは「親離れ、子離れ、スマホ離れ」と激励のお言葉を頂き、元気に旅立っていきました。

2日目:11月1日(日)
バンコク到着、終日オリエンテーション:

AFS タイによるオリエンテーションは、安全面のルール、異文化理解、生活習慣(タブー、衛生・健康管理)、タイ語レッスンなど、盛り沢山のプログラムでした。
異文化理解学習ではだまし絵を例に、1つの図柄でも複数の側面を読み取ることができるように、主観だけではなく周辺の状況や文脈の中で異文化を多方面から理解する必要があることが説明され、派遣生は興味深く耳を傾けていました。
タイ語レッスンでは、AFS生としてタイから日本に留学していた学生ボランティアより、ホームステイで活用できる挨拶やお礼の言葉などを楽しく学びました。また、先月同プログラムで来日していたタイ人中学生との再会を喜び、移動の疲れを見せつつも、熱心にメモをとるなど積極的な姿勢を見せていました。

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オリエンテーション

3日目:11月2日(月)
在タイ日本国大使館表敬訪問、王宮(Gland Palace)視察:

午前中は在タイ日本国大使館を表敬しました。一等書記官より、中学生向けに分かりやすく外交政策やタイでの暮らしについてご説明いただき、在外公館業務の理解を深めました。将来の夢が外交関係という生徒が多く、大使館の訪問は特別な経験となったことでしょう。その後はバンコクを一望できるタワーに登り、最上階で景色と食事を楽しみました。
午後は広大な王宮をガイドの案内の説明を聞きながらまわり、仏教がタイの生活に深く根付いていることを学びました。団長の指導で派遣生の団結力も徐々に深まってきています!

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在タイ日本大使館表敬
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王宮(Grand Palace)

4日目:11月3日(火)
スマトラ沖地震の被災地視察:

国内線でプーケットに向かい、現地ボランティアの方と一緒に2004年のスマトラ沖地震で大きな被害を受けたサイトを訪れました。
犠牲者の共同墓地で手を合わせた後、海岸から2km先まで座礁した水上警察船の現場で被災者から当時の様子を伺いながら、東日本大震災で被災した生徒を中心に復興支援について意見交換をしました。津波メモリアルパークでは、犠牲者の名前を刻印したプレートが埋め込まれているモニュメントをみて、外国人観光客や観光施設の従業員が多くの被害を受けたことを学びました。
プーケットは観光地として世界的にも有名ですが、津波で受けた甚大な被害を風化させないように震災関連の施設がたくさんありました。移動中も新しい道路や建設中のビルを多く目にし、震災から11年以上経った今も復興が続いていることが感じられました。派遣生は真剣な眼差しで学び、自然災害の恐ろしさや命の尊さを再確認したようです。

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左:津波メモリアルパーク(Memorial to victims tsunami)  右: 水上警察船(Tsunami Police Boat 813 Memorial)

5日目:11月4日(水)
学校交流(Satree Phuket School)、プーケット日本人会

Satree Phuket Schoolを訪問。校内には、津波を経験したことのない学生にも津波の怖さを伝えられるよう、津波被害のパネルを掲示した「Tsunami Room」が設けられていました。
全校生徒が集う朝礼で盛大に歓迎いただいた後、日本語を勉強しているクラスを訪れました。生徒は皆非常にフレンドリーで、初めて会う日本人に緊張しながらも「この日を大変楽しみにしていた」と笑顔いっぱいで出迎えてくれました。
日本側からは東日本大震災についてのプレゼンテーション、日本文化に関する○×クイズ、よさこいソーラン節等を披露して現地学生の関心を集め、特にアニメに関するクイズや現地学生に梅干しを食べてもらう試みは大いに盛り上がりました。現地学生からは派遣生一人ひとりに、日本語と英語とジェスチャーを使ったインタビューが行われ、終始和やかな交流となりました。午後はプーケット日本人会を訪問し、現地でホテルを経営している日本人の方より震災当時のホテルの様子やその後の暮らしについてお話を伺い、また東日本大震災で被災した生徒へお見舞いの言葉も頂戴しました。
プーケット滞在中は、様々な立場の方から震災の話を伺う機会がありましたが、10年以上たった今もプーケットの人々は当時の様子を鮮明に覚えており、次の世代に伝えていることが今回の視察を通してよく理解できました。

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学校交流Satree Phuket School
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プーケット日本人会

11月5日(木)
歴史博物館(Museum of Siam)視察、ホストファミリーと対面:

バンコクに戻り、歴史博物館(Museum of Siam)を訪れました。映像、ジオラマ、ゲームなど視覚・体験型で学べる施設で、古都アユタヤから首都バンコクへの変移を楽しく学びました。その後Wat RatchaOrot Schoolを訪問し、待ちに待ったホストファミリーとの対面です。
歓迎ムードの中、校長先生より生徒一人ひとりに花飾りを頂き、緊張と期待を胸に膨らませ、2泊3日のホームステイが始まりました。

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左:歴史博物館(Museum of Siam)  右:ホストファミリーと対面

11月6日(金)
学校交流(Wat RatchaOrot School):

派遣生はホストシスター/ブラザーと一緒に各々の交通手段で登校しました。朝礼では、全校生徒約2,000人の前で全員タイ語の挨拶を披露し、現地学生から拍手喝采を浴びました。派遣生からは歌を、現地学生からは伝統的な遊びを披露し、交流を深めました。
タイ文化学習では、衣装を着てタイダンスを習ったり、ムエタイの型を教わったり、花飾りを作成したりと盛り沢山の内容で、リラックスしながらタイの文化を肌で学びました。

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学校交流Wat RatchaOrot School

11月7日(土)
ホームステイ、フェアウェルパーティー:

夕方までホストファミリーと過ごした後、最後に学校でフェアウェルパーティーを行いました。派遣生同士はホームステイで体験したことを興奮した様子で話しており、短い期間ではあったものの家族の一員として大切にしていただけたこと、有意義な滞在だったことが感じ取れました。
現地学生によるタイ舞踊を楽しみ、早めの夕食をとった後、最後に校長先生が生徒一人ひとりにプログラム修了証を授与して盛大に見送ってくださり、空港へと向かいました。

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フェアウェルパーティー

11月8日(日)
解団式:

定刻通り羽田に到着。国際線ターミナル内の会議室内にて解団式を行いました。
派遣生は一人ひとりがプログラムを振り返り「あっという間の1週間だった」「暑い気候と辛い料理は慣れなかったが、ホストファミリーと電車やバイクで登校したことや、震災学習で学んだことを家族や学校の友達に伝えたい」など感想と今後の意気込みを述べました。
かめのり財団事務局長からは、今回の経験を今日で終わりとせず、今後の学校生活に活かすことを期待しているとお言葉を頂き、和やかな雰囲気の中、解散となりました。

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解団式

AFS日本協会及びAFSタイ共に中学生交流は初めての試みでしたが、消極的だった派遣生が1週間の交流を通して積極的になり、中学生は異文化の吸収が早いと感じました。
タイで交流した現地の人々は非常に親しみやすく、また日本文化への関心も高いことがうかがえました。派遣生も終始リラックスした様子で交流を深めましたが、海外に出るチャンスが少ない中学生が、教科書では習えない生の体験を通して、柔軟な考えを持ち、自身を発見し、将来の進路の選択肢を広げるという点で、中学生の交流事業は大変意義がある事業だと感じました。
微笑みの国タイでの出会いで学んだ経験を糧に、今後の学生生活を豊かなものにしていってくれることを願っています。

▼短期留学プログラム


この記事のカテゴリー: タイ