留学生活が中盤に差し掛かり、この体験レポートを書くにあたって、留学当初からつけている日記を読み返してみた。風の如く一瞬にして過ぎ去ってしまった、この6か月間だったが、この日記をたどると、親元を離れ、海外で生活した経験は、着実に自分を成長させていたのだと、ひしひしと感じる。今回は、マレーシアと日本で大きく異なる点とここで学んだことについてまとめてみたい。
マレーシア程、宗教と生活が密着している国はないと思う。さらに面白いことは、その宗教が1つではなく多数あることだ。学校において、信仰している宗教によって受ける科目が違うことすらある。日本では宗教を意識したことは無かったが、ここに来て必然と考えさせられた。政教分離、信仰の自由が原則となっている日本とは大きく異なる。宗教(民族)によって政党が区別されているのが実情であり、イスラム教徒に生まれたならば、一生その宗教を変えることはできない、と法律によって定められている。
しかし、ここに来て感銘を受けたのは、多くの人々が他宗教についても理解を示し、お互いを尊重していることだ。国際化が進んでいるこの世界において、他を尊重することは必要不可欠だと思う。マレーシアの人々の生き方が教えてくれたことだ。
宗教について書いたので、マレーシアの文化についても触れたいと思う。日本ではあまり知られていないが、マレーシアは人口2500万人という小国ながら歴とした多民族国家である。自分にとっては、これがマレーシアに来たかった最も大きな理由であった。マレーシアの日常に目を向けると、人々は肌の色・言語が違うことなど、気にも留めず生活している。さもなければ生きていけない。まるで世界の縮図を見ているようだと言っても過言ではない。
具体的に“言語”に焦点を当ててみるとわかりやすい。マレー系はマレー語、中華系は中国語、そしてインド系はタミル語と、各人種それぞれ母国語を持っている。では、異なる人種の人々で話をする時はどうしているのか?当たり前のように英語を使っている。もはやこの国においての英語は、私達日本人が想像する英語ではない。コミュニケーションの手段として、ごく一般化している。実際に、学校のような不特定多数に人々が混じっている場所では、みんな例外なく英語を使う。もちろん、かつて英国領土であったことも要因の一つではあるが、この多民族国家の特性が大きく助長している、と現地の人も言っている。いくつかの異なる文化を体験しつつ、インターナショナルな英語に加え、アジア圏の語学も複数学べるマレーシアでの留学は、とても1ヵ国に留学しているとは思えない程の充実感すら感じる。
幸せなことに、マレーシアの国民性を言えば、自他共に認めるフレンドリーさがある。6ヵ月前、このマレーシア、ペナンで自分のことを知っている人なんて、たった一人もいなかった。しかし、今となっては数百人の友達がここにいる。自分にとって彼らは、共に時間を過ごす仲間であり、語学の師であり、異なる文化や考え方を互いにシェアし合う共有者でもある。これこそが高校生の交換留学の醍醐味であると思う。この人間関係は、自分がマレーシアで生きた証であり、今の自分にとっては何にも代えがたい程、深く根付いている。
最後になりましたが、この留学に携わってくださったAFS日本、AFSマレーシアの方々、自分の生活を支えてくださっているホストファミリーと友人、先生たちを始めとする全ての方々に感謝したいと思います。そして、この留学を全面的に支援してくださったかめのり財団の方々へ、この場を借りて、心からお礼申し上げます。
2012年7月 マレーシアより
AFS59期生/(公財)かめのり財団奨学生 矢吹祐真
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